菅改造内閣が発足早々に直面しているいくつかの難題のうち、財政に関するものとして、追加経済対策を実行するための2010年度補正予算案の編成問題がある。
海江田万里経済財政担当相は9月24日の閣議後記者会見で、個人的には景気は踊り場にあると考えているという厳しい認識を示した上で、補正予算を伴う追加経済対策について、「財政規律一点張りではない方向で、1日も早い景気回復・デフレ克服をやっていきたい」「1日も早い補正予算の成立に向け、政府の考え方を固める。一方で、野党とも公式・非公式に聞いていく作業を行っていく必要がある」と発言。政府の方針については、菅直人首相の訪米からの帰国後に、財務・国家戦略・経済財政の3大臣で議論に着手する考えを明らかにした。
ここで、補正予算問題についての、菅首相と上記3大臣による、債券市場として注目しておくべき最近の発言内容を引用しておきたい。
◆菅首相
「2010年度補正予算案については、野党との話し合いが進めばその中で、提出後に議論しようということであれば政府案を提出した上で、国会で議論したい。帰国してから考えたい」
「規模については、国債を発行せずにどこまで対応できるのか、野党の要求と一致できる規模にできるのか、そういうことを含めて検討する」
(9月24日 訪米中の同行記者団との懇談)
◆野田佳彦財務相
「(野党が建設国債増発を主張していることへの考えを問われ)現段階では、国債発行は抑制をしていきたいという立場に変わりはない」
(9月21日 閣議後会見)
◆玄葉光一郎国家戦略相(民主党政調会長)
「経済対策について野党から具体的な申し入れをいただいている。それらを十二分に参考にさせていただく」
(9月24日 閣議後記者会見)
◆海江田経済財政相
「(補正予算の財源について)税収増も期待できるところだが、それがどのくらいになるのかということも、どこかの時点で判断しなければならない。埋蔵金も全くないわけではない」
「最初に国債発行ありきではない。しかも、国債には建設公債と特例公債があり、使う目的によって建設公債も許されている。最初に国債ありきではなく、手順を踏んでやっていきたい」
(9月24日 閣議後記者会見)
政府が9月10日に閣議決定した「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」には、「ステップ2」として、「今後の景気・雇用動向を踏まえた機動的・弾力的な対応 ~ 必要に応じて、国庫債務負担行為(1兆円)の活用を含め、補正予算の編成等、機動的・弾力的に対応する」と書かれていた。民主党代表選での菅・小沢一郎両氏の論戦を経て、補正予算の早期(=年内)編成が事実上既定路線となっている。
2010年度補正の財源としてはまず、9月の経済対策に書き込まれているように、当初予算に計上された国庫債務負担行為の1兆円枠がある。だが、これはもっぱら公共事業関係費を念頭に置いた仕組みで、契約を年度内に前倒しで済ませて、経費の支払いは翌年度に行うものであり、対象にできる事業の範囲が自ずと限定されてくる。このため、「即効性を期待できないとの意見もある」(9月23日 東京新聞)。
次に、2009年度決算剰余金の充当。財政法第6条の純剰余金は1兆6246億円であり、その2分の1を下らない金額を翌々年度までに国債償還財源に充てるよう、財政法は定めている。したがって、野党の協力を得て「ねじれ国会」で特例法を成立させることができる場合を除き、2009年度決算剰余金のうち2010年度補正予算に回すことのできる金額は、約8000億円である。