記憶しているところによれば、この日はたいてい天気が良い。日本の祝日が晴れの特異日を考慮して設定されていたりするように、フランスでもそういうデータを参考にしたのではないかと思えるほど。
フランス全土で1万5000を超える歴史的建造物が一挙公開
暑すぎもせず、かといって、秋本番の肌寒さはまだ遠く、空は快晴。ことしもまたそういう日和だった。
この日というのは、「Journées Européennes du Patrimoine(ヨーロッパ文化遺産の日)」。9月の第3番目の週末がそれで、フランス全国で1万5000を超える歴史的建造物などが一般公開される。
象徴的な場所としては、大統領府エリゼ宮や各省庁、大使館。さらに、市役所や学校、病院、工場、庭園など。
普段は一般には公開されていない施設が多く、あるいは開かれてはいても、特別の用がないと行かないところなどが、たいてい無料で見学できる。
文化省主導によるこの試みが始まったのは、1984年のこと。
初年度は、フランス全体で3000カ所ほどの公開で、日数も日曜日1日限りだったのが、年を追うにしたがって公開箇所の数が増え、1990年代に入ると、全国1万カ所の規模となるのと同時に、ヨーロッパ各国にこのイベントは広がっていった。参加国は現在49を数える。
歴史遺産によってつくられている町
パリ市内だけでも数百カ所が公開されるという中には、いかにも歴史の重みを感じさせる施設のほか、意外な新顔もある。
例えば、フランス国鉄のダイヤ管理センター、レビュー「LIDO」の舞台裏などもリストに加えられているあたりからは、単に重厚長大な歴史的建造物だけがフランスの文化ではないという、許容量の広さが見て取れるかもしれない。
ところで、パリの中心を歩いていると、右を見ても左を見ても、歴史遺産によって町がつくられていると感じる。
中でも、ノートルダム寺院やルーブル美術館などは最たるもので、この町を訪れたなら、まず最初に足を運ぶ場所だろう。