9月14日午後、民主党代表選のうち国会議員票の投開票が行われ、地方議員票と党員・サポーター票と合計した結果、菅直人首相が721ポイント、小沢一郎前幹事長が491ポイントで、菅首相が勝利し、再選を果たした。

 市場では選挙結果が市場に及ぼす影響について、円売り介入に対する積極姿勢は小沢候補の方が強く、財政規律重視は菅候補ということで、小沢候補勝利の場合は円安・株高・債券安、菅候補勝利の場合はその逆(ないし中立)を想定する向きが多かった。

 東京市場では、選挙結果が判明するよりも前に、菅首相の勝利を織り込もうとする先回り的な動きがあり、それぞれの市場ごとにタイミングはまちまちだったが、円高・株安・債券高に動いていた(債券相場については20年債入札が事前に警戒されたほどは悪い結果にならなかったことが昼過ぎに判明し、買い圧力が強まるきっかけになっていた)。

 実際に選挙結果が判明した後は、イベント通過で不透明感が薄れたことを背景とする条件反射的な買いが入り、債券相場は急上昇。先物が141.70円をつけたほか、10年債利回りは1.100%まで急低下した。為替市場では、ドル/円相場が83.10円前後まで急速に円高に動いたものの、一過性の動きにとどまり、その後はドルが小幅買い戻されている。

図表1: 民主党代表選の結果
  菅直人首相 小沢一郎前幹事長
国会議員票 206ポイント×2 200ポイント×2
地方議員票 60ポイント 40ポイント
党員・サポーター票 249ポイント 51ポイント
合計 721ポイント 491ポイント

出所: マスコミ各社報道よりみずほ証券金融市場調査部作成

 次の首相を事実上決める選挙であることから、民主党代表選は、金融市場でも注目が集まってきたイベントである。しかし、これで日本の政策運営、さらには日本の政治全体の流れが決まったということにはならない。なぜなら、野党が反対すれば法案が一本も通らない「ねじれ国会」の状況は、民主党代表選の前も後も、何も変わっていないからである。

 さらに、今回の代表選が民主党をほぼ二分する激烈なものになっただけに、党内融和・挙党態勢確立を実現できるかどうか、両陣営に加えて世論も賛意を示すような党役員人事や内閣改造を実現することができるかどうかが問われてくるわけだが、これも難題である。「しこりを残さずに『ノーサイド』とできるのか、それとも新たな戦いの『キックオフ』となるのか」という疑問を投げかけた報道も、9月14日朝の時点で出ていた(9月14日 読売)。

 また、市場のテーマとしては、日本国内の政治情勢よりも、米国経済の下振れリスクや米金融政策動向の方が、今後もはるかに重みがあるテーマであり続けることは自明だろう。

 米国経済のバランスシート調整が終わるまでには、なおかなりの時間が必要である。金融政策面からは緩和方向での支援措置が引き続き欠かせない。そうしたことを考えると、長期金利が内外でレンジを大きく切り上げるとは予想し難い。したがって、金利低下余地を模索する局面が一巡した後は、当面の金利レンジ上限を確認した上で、債券を買い戻す動きが強まり、徐々に落ち着きどころとなるレンジが形成されてくるとみるのが順当である。これは、民主党代表選の結果にかかわらず、自然に想定される動き。10年債利回りで1.0~1.2%前後のレンジを、筆者は引き続き想定している。

 民主党代表選の結果を受けたイニシャルリアクションが一巡した後、市場は徐々に、不透明感が引き続き強い国内政治情勢と、米国の経済・金融政策の2つの行方をしっかり見極めようとするモードに変わっていくだろう。