MBA関連の著書を多く持つ佐藤智恵氏。同氏は、1992年にNHKに入局し、「NHKニュース」や「クローズアップ現代」、NHKスペシャルなどを制作。テレビ番組のディレクターとしてキャリアを順調に積み重ねてきた。
作家/コンサルタント
コロンビア大学経営大学院卒
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しかし、2000年1月、米コロンビア大学経営大学院への留学を機にNHKを退局。留学の目的は、MBAの取得だった。なぜ佐藤氏は、テレビ番組の制作者としてのキャリアを中断し、MBAの取得を目指したのだろうか。
その理由を佐藤氏に尋ねたところ、「20代のうちに留学したいと思ったのが第一の理由です。最初は、ジャーナリストを養成する大学院(ジャーナリズムスクール)や芸術大学院への進学を考えていました。ところが海外留学予備校でカウンセラーに相談したところ、意外にもMBAの取得を勧められたのです」とのこと。テレビ番組のディレクターとしてのキャリアをもつ同氏の場合、そのキャリアを生かしてジャーナリズムスクールを目指すのが順当に思える。しかし、留学予備校のカウンセラーのアドバイスはそうではなかった。
「『将来何をやりたいかわからないなら、MBA留学がいいよ』と言われたのです。ジャーナリズムスクールで学ぶことは、すでに制作現場で学んできたことだし、卒業してもジャーナリストの道に戻るしかない。一方、MBAを取得すれば、まったく別の業種に転職して、新しいキャリアを積むことができる。仮にジャーナリストに戻ることになったとしても、経営という専門性を持つことができる。MBAは職業選択の幅を広げる、ということでした」(佐藤氏)。
大学院で何を学ぶかを考えることは、すなわち自分自身のキャリアを考えることだ。それだけに、何を学ぶかについては考え尽くす必要がある。
もちろん専門的なキャリアを積み、人生を歩んでいくという選択もある。その場合は、特定の分野に特化したスクールを選ぶべきだ。一方で、MBAでは経済の仕組みからリーダーシップまで、経営に関わることのすべてを学ぶことができる。そういった意味では、将来のキャリアの選択肢を増やすのに最適な学位といえるだろう。
これまでのキャリアとは全く異なる業界に就職
コロンビア大学経営大学院でMBA取得後、佐藤氏はボストンコンサルティンググループに入社。経営コンサルタントとして、全社戦略立案や経営ビジョンの策定など多くのプロジェクトに携わった。これまでの放送業界とは全く異なる業界だ。その後、外資系テレビ局等を経て、独立した。
「財務や会計などの実務的なことも学びましたが、卒業後、最も役に立っているのは、リーダーシップを身につけたことです。物事を世界規模、会社規模といった引いた視点でとらえることができるようになりました。コンサルティングをするときも、テレビ番組のコメンテーターとしてコメントするときも、MBA取得者ならではの視点を忘れないようにしています」と佐藤氏。海外留学予備校の先生が予見したとおり、MBAの取得によって人生の選択肢は広がり、見事に新しいキャリアの道を開くことができたのだ。
人生という長いスパンでキャリアを考える時、大学院で学ぶことはプラスに働く。自分自身の価値を高め、選択肢を増やすことができれば、より自分らしく生きることができる。佐藤氏は、まさにその成功モデルといえるだろう。
大学院で得られるのは、学位だけではない。実は、独自のネットワークを築くこともできる。「経営大学院には、様々なバックグラウンドを持った人が集まっています。自分が貢献できることは全力でやりましたが、できないところは多くのクラスメートに助けてもらいました。ともに濃密な2年間を過ごした仲間とは特別な絆が生まれます。こうした経営大学院の卒業生ネットワークは、ほかでは構築できない貴重なネットワークだと思います」と、佐藤氏は当時を振り返る。
<受験者に対して>
国内外では、志願者数の減少に伴い、MBAを取得する日本人が減っているという。しかしこの状況は、自身のキャリアを考えている人にとってみればチャンスともいえる。佐藤氏の話からもわかるように、経営大学院で学ぶことはキャリアの選択肢を広げるからだ。
日本の労働市場は海外ほど流動化していないが、グローバル化が重んじられる現在、経営大学院で経営者、管理職としてのスキルを身に付けておけば、転職にも昇進にもプラスに働くだろう。もちろん、実務の中で学ぶこともある。しかし、経営大学院では実務では学ぶことができないマインドを身につけ、貴重な人的ネットワークを構築することができる。
佐藤氏は、インタビューの最後に次のように語った。「最近は、国内の経営大学院もグローバル人材の育成に注力していて、カリキュラムも工夫されています。海外、国内にかかわらず、ビジネススクールでの学びと経験は、自分の視野を広げる機会にもなるはずです。キャリアアップのためにも、ぜひMBAの取得に挑戦してほしいと思います」。
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