ビジネス・ブレークスルー大学大学院(BBT大学院)は、日本で初めて文科省が認可した「遠隔(オンライン)教育方式」の経営大学院だ。スマートフォンやパソコンなどのインターネットに接続できる端末から遠隔教育プラットフォーム「AirCampus®」を使うことで講義やディスカッションを行っているのだ。

AirCampus®には、世界各国からアクセスがあり、出張中のビジネスパーソンも多い。いつでもどこでも学ぶことができるので、仕事やプライベートが障害にならないというメリットもある。

そのため、同校に通う学生は、海外で勤務しながら受講している学生をはじめ、ビジネスが忙しく通学できないといった学生も少なくない。人的ネットワークの幅を広げるという意味では、この上なく恵まれた環境と言える。

「“オンラインだと人的ネットワークの構築が難しい”と考えるのが定説となっているようですが、多種多様な人脈を構築する場合に、オンラインでの集いはとても効果的です。人的ネットワークの本来の意味を考えて頂ければ、飲み会やイベントなど、必ずしもリアルで会う必要性はないと思います。実際に、これまでの経験やデータからそれらは実証されています」(松戸氏)

ビジネス・ブレークスルー大学大学院
事務局 マネージャー 松戸 治 氏


オンラインで人脈を築く効果は、すでに多くの人がSNSで体験済みだろう。さらに、BBT大学院では卒業生もAirCampus®を利用できるため、全世界で活躍している現役の卒業生とも容易につながれる。

実は、BBT大学院は女性の学生比率が伸びている。事務局の原田佳奈氏にその理由について聞くと、「女性の場合、キャリアアップとライフイベントとの時期が重なることが多いです。仕事も生活も忙しい中で、“ビジネスを学びたい”と考えた場合、オンラインが最適な選択肢となっているようです。“通学”が1つのハードルになっている女性にとってBBTは取り組みやすい大学院となっていると思います」と分析した。

ビジネス・ブレークスルー大学大学院
事務局 原田 佳奈 氏

 

論理的思考力を養うため、
仮想ディスカッションスペースを活用

 これまで日本は、長期に亘る経済不況に耐えてきた。最近は、アベノミクスをはじめとした経済財政政策などが奏功し、その出口が見えつつあるものの、いまだ市場では激しい競争が続いている。

自社の売り上げを確保するため、多くの企業は製品・サービスの付加価値を高め、市場競争から抜け出ようと必死だ。生産性や業務効率を向上させるため、不断の努力を続けている。こういった状況下において、生き残りをかけて自分自身のパフォーマンスアップを目指し、MBA取得を志すビジネスパーソンも少なくない。

「以前は、特殊であったMBAの知識や理論を体系的に覚え、その方程式に当てはめることで、有効な戦略を打つことができ、差別化につながっていたかもしれません。しかし情報化が進んだ現在、そのような知識ですらインターネットから容易に入手できてしまいます。言わば、方程式どおりの戦略であれば、誰もが立てられる時代だと思います。それ故に、知識偏重で考えると似たようなソリューションに偏ってしまいます。似たりよったりの戦略を複数の企業が同時に実施すれば、おのずと過当競争に巻き込まれることになります。つまり、この時代を勝ち抜くために必要な武器は、知識ではないと思います」とマネージャーの松戸治氏は言う。

「MBAの知識」だけでは太刀打ちできないとなれば、MBAの知識を利用しつつ、さらにオリジナリティを発揮し、付加価値をつけていく必要がある。そのために必要なのは「考える力」、すなわち「論理的思考力」である。

一般に、日本人は論理思考が弱いと言われる。その理由として、日本が島国であるということ、日本語が持つHigh-context文化が上げられる。欧米のように、さまざまな民族が共存する多民族国家の場合、コミュニケーションのベースとして考えるべきはそれぞれの文化の違いだ。それぞれ違った常識を持つため、議論する際は、意図が正確に通じるように論理的に言葉を選ぶことになる。一方、日本はお互いの文化が同一であると認識しているため、「みなまで言わずとも察する」ことを美徳としている。この美徳のもとでは、論理的思考は育まれない。

「“考える力”を育てるためには、現場の状況や顧客が何を望んでいるのかを常に考え、自分なりの答えを出すトレーニングが必要不可欠です。そのため、当校のカリキュラムは、インプットよりアウトプットを重視しているので、ディスカッションに、より多くの時間を割いています」と松戸氏は語る。

松戸氏の言う「ディスカッション」とは、顔をつきあわせて行うリアルタイムの議論のことではない。AirCampus®上のサイバーディスカッションスペースにてテキストベースで行われるものを指す。

このサイバーディスカッションスペースには、24時間/365日いつでも参加できる上、場所の制約もない。つまり、出張中や通勤中でも、参加できるのだ。参加者たちは、空いた時間を使ってディスカッションに参加し、納得がいくまで考え抜いた意見を表明している。

「AirCampus®では、ファクト(論拠)ベースでのディスカッションがマストです。思い付きや経験談の発言は、ディスカッション以外のスペースで行ってもらいます。受講生の皆さんがファクトベースで、考え尽くしたディスカッションをすることで、最終的には収束に向かいます。既成概念で凝り固まっている思考を取り除くには、このトレーニング法がベターだと思っています」と松戸氏は言う。

なお、このファクトベースのディスカッションは、グローバル社会においても有効とBBT大学院では考えている。異なる文化で育った者同士の場合、ファクトを共通認識とし、お互いの前提を確認した上でコミュニケーションを図る必要があるためだ。AirCampus®のようなツールを使ったディスカッションは、その効果的な訓練になるという。本気で世界を舞台に活躍するビジネスパーソンを養成するには、こういった訓練も積んでいく必要があるのだろう。

AirCampus®は、人的ネットワークの構築や論理的思考のトレーニング、もちろん学習にも効果的な仕組みだ。BBT大学院で身につけた「論理的思考」を武器に、活躍している卒業生も増えている。彼らの今後の活動にも注目したい。

 

<取材後記>

 BBT大学院への取材の後、同校の卒業生である岩本進也氏に話を聞く機会があった。彼は、エンジニアとして働く一方で、同校でMBAを取得したという。

「いわゆる一流企業に入社し、周りからは順風満帆と言われた。しかし、仕事上の悩みもあった。その解決法もわからない。この状況を打破するために、ビジネスを学ぼうと決意した」という。

ビジネス・ブレークスルー大学大学院
卒業生 岩本 進也 氏

 
BBT大学院でビジネスを学んだ結果「考える力がついた」と、岩本氏は笑う。仕事の課題についても「まだ、解決できないものもあるが、仕組みを理解できるようになり、課題が明確化された。BBT大学院でビジネスを学んだ意義は大きい」とのことだ。

現在の岩本氏は、仕事以外の活動も活発だ。「トライアスロンや地域活性化のための支援活動にも顔を出しています。BBT大学院が主催する一般の方向けのワークショップ・セミナーでは、講師として参加し、多くの人たちにBBT流の考え方を伝えながら課題解決を手伝っています」とのこと。

岩本氏のワークショップ風景

 
そう話す彼は、実に生き生きと輝いて見えた。少なくとも岩本氏にとって、BBT大学院で培った「考える力」が「生きるための活力」になっているのは間違いない。


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