多摩大学の社会人向けMBAコースが開設されたのは、1993年。以来、20余年にわたって社会人経営大学院を運営し、学位取得者はすでに600名を超えている。

当校の特徴のひとつに、「イノベーターシップ」がある。「イノベーターシップ」とは、「イノベーション」と「リーダーシップ」を融合させた造語。これからのリーダーに必要とされる要素の1つとして、当校は特に注力しているという。

もともとMBAは、プロセスを管理し目的を効率的に達成することができる「エクセレント・マネージャー」を育てることに軸足が置かれていた。そのため、当時は「マネジメント」の知識や技術を中心に学んでいた。

しかし、やがて市場は激動の時代を迎え、マネジメントの知識や技術では、到底市場の変化に追いつけなくなった。そのため、企業は単なるマネジメント力ではなく、状況に応じて困難な課題解決することができるリーダー力を求めるようになった。

ところが、企業のなかには「利益成長」を求め、「勝ち組になるためには手段を選ばない」というリーダーもいる。実際、そういったリーダーの存在によって、企業だけでなく、経済全体が打撃を受ける大きな事件が何度か発生している。

そこで、住みやすく暮らしやすい未来を作り上げるため、新しい世の中を作るための基礎を築く志をもった人をより多く輩出すべく、イノベーターシップを持つリーダーを育成する必要が生じているのである。
 

立体的な学びを目指した目的別のカリキュラム

 「当校では、イノベーターの育成に努めている」と大学院経営情報学研究科・研究科長の徳岡晃一郎教授は言う。それは、同校大学院のカリキュラムからも見て取れる。

多摩大学 大学院経営情報学研究科
研究科長 徳岡 晃一郎 教授


通常、MBAを謳う大学院のカリキュラムは、「組織」「経営」「マーケティング」「財務/会計」「リーダーシップ」といった専門領域に各科目が配置される。しかし同校では、(1)マーケティングやファイナンスといった専門領域を融合した「実践知考具」、(2)最先端のベストプラクティスとビジネスモデルを探求し、専門性の深化を図る「最新ビジネス実践知」、(3)ビジネス構想力の基盤となる「教育基礎」といった目的別カテゴリに、「志」や「イノベーション」、「顧客創造」、「社会・事業構想」、「ソーシャルビジネス」、「広い視野」というような科目を配置した。

このカリキュラムを説明する徳岡教授は、「これらの問題解決には、専門領域の垣根を越える必要がある」と述べた。

「これまでは、専門領域に対して深い造詣を持つスペシャリストやそれを横に束ねるジェネラリストがさまざまな問題を解決してきた。そのため、専門領域を学ぶことには大きな意味があった。しかし、今はそうではない。思想やビジョン、志、戦略、戦術、技術、人間力といった事柄すべてを垂直統合的に把握し、過去から未来、専門から教養、既存分野から産業融合・産業創造など、知を縦横無尽に活用できる人材が求められている」と、徳岡教授は言う。

多摩大学大学院では、目的別のカリキュラムを使い、イノベーターシップを持つリーダーを育成しようとしているのだ。目的別のカリキュラムは新しい試みとなるが、学生からの評判は上々という。

2014年度開講
「ネオ・リベラルアーツ特別講義」
@六本木ヒルズ(アカデミーヒルズ)
田坂 広志 教授 × 岡田 武史 氏 の様子


また、MBAコースの学生は、データサイエンティストコースの授業を受講できるようになっている。現在、ビジネスの現場において「ビッグデータ」が注目を集めている。企業は、膨大なデータを分析しそこから傾向を読み解くことで、次の展開を正しく判断できるようになるからだ。つまり、ビジネスに欠かせない知見として「データ」の存在感が増すにつれ、そのデータを正しく読み解く人物が求められるようになったということだ。

「イノベーターシップ+データサイエンティスト」という組み合わせが、これからのビジネスに欠かせないものになることは間違いない。その先駆けとして、同校の活動に注目が集まっている。
 

<取材後記>

 多摩大学大学院は、品川駅前という通いやすいロケーションにサテライトキャンパスを構えている。また、社会人が継続的に勉強できるように工夫されたカリキュラムを採用している。社会人にとっては、この上なく通いやすい大学院と言えるだろう。そのため、同校に通う学生は、年齢層も職業もさまざま。この学校に通うことにより、幅広い人的ネットワークが構築できることは間違いない。

社会人のための学びの場
品川サテライト


さらに、講師陣の層も厚い。世界を圧巻した「ビジネスモデル・ジェネレーション」のフレームワーク「ビジネスモデルキャンバス」の開発者アレックス・オスターワルダー氏が、グローバルフェローを務めている。また、雑誌「遊」の編集長であり、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長である松岡正剛氏やシンクタンク・ソフィアバンク代表の田坂広志教授など、名だたるメンバーを揃えている。同校に通うことで、オールスターの教授陣の授業を受けることができるのだ。

多摩大学大学院は経営実学志塾を基本コンセプトに「志ある一業を担う経営者、一業を起こす起業家を育てる実学志向のビジネススクール」を謳っている。日本と世界を変える人材が、この中から登場するに違いない。


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