香港でMERS疑いの女性搬送、一時パニックに

香港の国際空港で、中東呼吸器症候群(MERS)の予防措置として検温される乗客(2015年6月5日撮影)〔AFPBB News

 中国・北京出身の日本科学未来館・科学コミュニケーター、陳ドゥです。

 MERSに関しては、同じく科学コミュニケーターの金が書いたように(「MERSはなぜこんなに韓国で流行しているのか?」)、韓国では感染者だけでなく、死亡例も出ており深刻な事態になっています。同じ大陸にある私の出身地、中国も、MERSウイルスの脅威にさらされています

 ことの発端は1人のMERSウイルス感染者でした。

 5月26日に、韓国の男性(44歳)が技術交流会に参加するため、香港経由で広東省に入りました。中国での報道によれば、男性は韓国を出国の際に、すでに咳が出ていたそうです。香港に入る際に、「14日以内にMERS患者との接触がある否か」という質問には「NO」と答えたと報じられています。実際にはこの男性の父親はMERS感染者でした。

 そして、5月29日、この韓国人男性は、広東に滞在中に病状が悪化し、病院でMERSと診断されました。香港と中国の当局はこの男性と接触した人と連絡をとり、香港では43名、広東では78名が隔離措置となりました。幸い、潜伏期間とされる2週間がたった6月11日までに発症した人はなく、2回の検査を得て、6月12日早朝に全員帰宅したそうです。

MERS感染者である韓国人男性の中国への入国ルート(『中国まるごと百科事典』で提供されている地図を使用し、著者作成)