我が国の古くて新しい問題と言えば、領土問題であろう。その領土問題に最近看過できぬ事象が起きている。
1. 最近の懸念すべき領土関連動向
その第1は、7月30日に予定していた「2010年防衛白書」の閣議了承を9月に延期したことである。
仙谷由人官房長官は延期の理由として、「韓国の哨戒艦沈没事件に関する国連の動きや、防衛大綱見直しの報告書などを新たに記載すること」などを挙げたと報じられている。
沈没と言うと事故によって沈んだというニュアンスを感じてしまう。日本政府として適切な語彙を使ったと言えるのだろうか。爆沈あるいは撃沈と沈没原因を明確にした文言を使用すべきであろうと思料する。
(閑話休題)
読売新聞によれば、「政府関係者によると、本当の理由は、韓国側への配慮だとされる。防衛白書は例年、竹島を『我が国固有の領土』と明記している。今年は、8月29日に日韓併合条約発効100年を迎えたこともあり、反日感情を刺激したくなかったという」。
これが事実ならば、由々しき事態である。自民党政権時代よりもさらに弱腰になっているのではないかと危惧せざるを得ない。
第2点は、北方領土に関する岡田克也外務大臣、というか外務省の対応である。
択捉島において、ロシア軍が本(2010)年6月29日から行なった「軍事演習・ボストーク(東)2010」に関する対応に関してである。
報道によれば、兵士2万人、装備品2万5000、航空機70機、船舶30隻が投入されるという大規模なもので、ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領も7月4日には視察したという。
ロシアは、最近の好調な景気に支えられ、軍改革も相当程度に進展していると考えられている。この演習が我が国に対する示威行動でなくて何であろうか?
またロシアは、日本が第2次大戦の降伏文書に調印した9月2日を事実上の対日戦勝記念日「大戦終結の日」に制定した。これなど、北方領土占拠の正当性を強弁せんとするロシアの悪意が見え見えである。
この一連のロシアの行動に対する菅直人政権の抗議がどうも通り一遍であり、宥和姿勢が目立つ。
第3点が、東シナ海のガス田共同開発交渉開始との報道である。