「ソーシャルバカンス」の目的地の1つ、インドネシアにある現地人経営のホテル。周囲は自然にあふれ、リラックスするためのバカンスにはもってこいだ(筆者撮影、以下特記以外も同様)
 

オランダ人の財布のひもが緩む3月

 今年も春の訪れが遅いオランダ。4月を迎えてもまだ朝方の冷え込みは厳しく、氷点下になることもある。北風が吹けば、日中でも体感気温は2、3度といったところだ。

 それに加え、ほぼ毎日どんよりと曇り、今にも泣き出しそうな灰色の空を半年以上も頭上に戴いているとなれば、誰しも太陽が恋しくなるのは当然のことかもしれない。今年は3月29日にサマータイム(夏時間)へと切り替わったが、それも名ばかり。夏まだ遠きオランダだ。

 しかし、オランダ人たちにとって3月は、実は待ちに待った月でもある。それは、夏のバカンスの過ごし方を懐具合と相談して決める時期だからだ。

 欧州金融危機のあおりで経済状況は決して上向きとはいえないが、「冷蔵庫の中が空っぽでも、バカンスだけはぜったいに出かけたい!」と自虐的に笑うオランダ人たちにとって、夏のバカンスをどう過ごすかは人生で最大の関心事なのだ。

 一般に、倹約が国民的気質(つまりケチ)といわれるオランダ人たちにとって、夏のバカンスに限っては例外が許されるとみえ、財布のひももついつい緩みがちになる。

 そんな彼らがもっとも理想とするのは、輝く太陽の下、ビーチに面したホテルでリラックスしながら過ごすリゾート志向のバカンスである。浮世を忘れて思い切り羽を伸ばし、朝から晩まで上げ膳据え膳で過ごすことこそが至高の休日で、これを彼らは、「年に1度のデカダンス」と呼ぶ。