先週の米国株式市場
―FOMCのハト派的声明を受け大幅反発―


<先週の概況>

先週の米国株式市場はダウ平均が週間で400ドル近く上昇して1万8000ドルの大台を回復するなど、ダウ平均とS&P500指数は4週ぶりに反発しました。ナスダック総合指数も3週ぶりに反発し、5,000ポイントの大台を回復しました。

18日に発表されたFOMCの声明発表で利上げを急がないというメッセージが市場に伝わったことで株価は大きく上昇しました。


米国株式市場バリュエーション




業種別リターン



ダウ平均採用銘柄 週間騰落率ランキング



<上昇>

ダウ平均採用の30銘柄中29銘柄が上昇しました。ナイキ(NKE)は12―2月期の決算発表を行い、前年同期比で増収増益を達成、1株利益が市場予想を上回ったことが好感され大きく上昇しました。また、原油価格の反発を受けシェブロン(CVX)やエクソン・モービル(XOM)も反発しています。また、3月19日にダウ平均の銘柄入れ替えが実施され、AT&T(T)が外れてアップル(AAPL)が採用されました。

<下落>

化学大手のデュポン(DD)は外資系証券会社が投資判断を引き下げたことを受け、大きく売られました。

先週発表された主な経済指標

3月18日 米連邦公開市場委員会(FOMC)結果発表

3月18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明発表が行なわれました。事前の予想通り金融政策の正常化について「忍耐強くいられる」という表現が削除され、代わりに「労働市場のさらなる改善が確認され、中期的にインフレ率が2%目標に戻ると合理的な確信が持てたときに」利上げが行なわれるとの表現が採用されました。

イエレンFRB議長は表現の変更が6月の利上げを決定したものではないことを強調しました。また、声明と合わせて発表されたFOMCメンバーの今後の金利見通しは12月の発表時より2015年末の金利見通しが大きく下方修正されており、FOMCは利上げを急がないというメッセージとして市場は好感しました。

FOMCの発表前に前日比150ドル安程度まで下落していたダウ平均は発表を好感して200ドル超の上昇となりました。

今後発表される主な経済指標

3月24日 2月消費者物価指数(CPIコア・前年同月比) 市場予想 +1.7% 前月 +1.6%

24日に2月の消費者物価指数(CPI)が発表されます。FRB(連邦準備制度理事会)は物価の安定と雇用の最大化という2つの法的責務を負っています。労働市場の改善は非常に順調に進んでいる一方、物価上昇率は原油安の影響もあって伸びが鈍っています。

CPIが上振れすれば利上げの早期化、下振れすれば後ずれといった思惑が高まる可能性があり注目されます。


マーケットビュー
―判断難しい局面も米国株の出遅れ感強くアップサイド見込む―

先週のマーケットビューでは、FOMCの声明内容次第で大きく異なる展開を予想と記しました。「忍耐強く」という表現が削除されればタカ派的と受け止められて株安方向へのリスクを懸念していましたが、イエレン議長率いるFOMCメンバーの見事な市場との対話によって、6月利上げのオプションが残されながら、利上げを急がないというメッセージが市場に伝わりました。

声明を好感する格好でダウ平均は1万8000ドル回復となりましたが、このまま史上最高値更新となるか非常に判断が難しい局面だと考えています。

筆者は足元のレポートで、直近発表された経済指標が雇用関連を除いて冴えない内容だったこと、またドル高の進行で企業収益が圧迫されるとの懸念から米国株の上値は重いのではないかとの考えをお示しし、概ね想定通りの展開となってきました。

トムソン・ロイター社の集計によれば、S&P500採用企業の2015年1―3月期の1株利益は前年同期比2.7%減となる見込みです。前年同期比で減益となれば2009年7―9月期以来で、いかにドル高が企業収益を圧迫しているかがわかります。また、S&P500の予想PERは17倍台と過熱感があるとまでは言えないまでも、大きな魅力がある水準ではありません。

以上のようにファンダメンタルズ面から見ると米国株の上値は重い展開が想定できますが、一方で今回のFOMCの決定が市場のセンチメントを改善し、ドル安方向への巻き戻しのきっかけとなる可能性もあります。さらに、年初と比較してドイツ株が20%超、日本株が10%超の大幅上昇となっているにもかかわらず米国株はほぼ横ばい圏で、そうした点に注目すれば、米国株にアップサイドを見出すことができます。

冴えないファンダメンタルズではあるものの、利上げの時期が後ずれするとの観測が高まった以上、年初からの出遅れ感に注目が集まって、米国株はもう1段の上昇を遂げるのではないかと見ています。

フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕

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