洪水の惨害に見舞われたパキスタン支援において、中国はどうしたことか大きく出遅れた。日本はなんとか9位に顔を出すけれど、ドイツばかりかノルウェーの後塵をも拝し、いまひとつ目立たない。
パキスタン政府の国家災害対策局(National Disaster Management Authority)はそのウェブサイトで、被災と復興支援の状況を毎日更新し世界に伝えようとしている。
パキスタン政府必死の情報公開
日頃はその民主主義の質に少なからず疑問符のつく国である。しかしこの際、情報の迅速かつ正確な公開が支援の取り付けに不可欠だと割り切ったのであろう、ウェブサイトに盛られた内容は豊富で、更新は頻繁だ。
アップデートのため担当者が不休の働きをしているだろうことを窺わせ、サイトはどこか必死さを滲ませている。
ほぼ日次の更新を伴う情報の1つに、各国からの支援をまとめたエクセル・ファイルがある。
国名アルファベット順で掲載された一覧表を金額の大小で整理してみると、いまどのような勢力が、いかなる思惑でパキスタンに援助外交を試みようとしているかが一目瞭然となる(別表参照)。
突出するのが英国とそのかつての自治植民地(ドミニオン)国、カナダと豪州で、3者合計では1億2880万米ドルとなって断然首位に立つ。
英語圏民主主義勢力が突出
これに米国を加えそのまとまりを英語圏民主主義リーグとでも呼ぶなら、4国合計額2億456万ドルは、5位の国連から、5万ドルを約束した最下位(49位)ハンガリーまでの合計額2億937万ドルに対し、わずかに劣るのみ。
すなわちパキスタン支援勢力とは目下のところ、英語圏民主主義リーグである。
英国などではパキスタン出身者が膨大な人口をなすから、思い切った支援は内政上の要請でもあっただろう。また「英連邦(コモンウェルス)」メンバー同士の友誼という意味が、幾分かはあったかもしれない。
しかし、動機の多くが地政学的・本能的なものだったことは想像に難くない。いまパキスタンが破綻国家になってしまっては、アフガニスタンと合わせ、あの一帯が長期にわたって収拾不能の状態になる。
英国は332、カナダ、豪州はそれぞれ151、20の犠牲者を対アフガン戦で出している(本稿執筆時点、出所)。洪水は、これまでの「アフパク」(Af-Pak)安定化努力を文字通り水泡に帰させかねない。焦慮に駆り立てられてのものだろう。
「英語圏」を括ってしまうと、ドイツやノルウェーが立腹するだろうか。両国ともアフガニスタン作戦で犠牲を出している(ドイツは42人、ノルウェーは9人、出所は前に同じ)。動機の多くを英米加豪と共有する。