先日、所用でフランクフルトへ行ったが、シュトゥットガルトもフランクフルトも、中央駅には警官がたくさん立っていた。

 その後、土曜日にシュトゥットガルトの町の雑踏を歩いて、またビックリ。すごい数の警官。クリスマス前にパトロールが強まるのは毎年のことだが、クリスマス商戦もまだ本格的に始まっていない今、これはちょっと異常。

 よく見ると、警官は背中に“アンチ・コンフリクト・チーム”と書いたベストを着ている。「エッ、何、これ・・・。アンチ闘争チーム?」いずれにしても、警戒のレベルが上がっていることは間違いない。

警官だらけの繁華街と路上の”宗教戦争”

 その日、もう一つ、町の中心の歩行者天国で目に付いたのが、スタンドを出してコーランを積み上げ、無料で配っているサラフィスト(イスラム過激派の一派)たちだった。「ああ、警戒はこのせいもあるのか」と気づいた。

 コーランの無料配布は、すでに3年くらい前から、あちこちの都市で行われている。シュトゥットガルトでもときどき見かける。コーランはイスラムの聖典なので、いわばキリスト教の聖書と同じ位置づけだ。だから当初は、「へえ、コーランね」と思って寄ってくる人も大勢いた。私だって、興味はある。

 しかし、今では、このアクションはサラフィストによってなされているということが明らかになってしまった。

 だから、普通の人はあまり近づかない。先日も、遠目に見ていると、ポツリ、ポツリと立ち止まる人がいる程度だった。もちろん、ここでイスラムについての対話が為されること自体は、別に非難されることでも何でもない。

 コーランを配っているのは、人の良さそうな普通の青年たちだ。ルーツはイスラム系だろうが、おそらく国籍はドイツ。長いアラブ式の装束の人もたまにいるが、たいていはTシャツとジーンズという普通の形(なり)。コーランを手に取った人たちと、朗らかに何か話している。

 歩行者天国をそのまま進んでいくと、今度は、キリスト教のスタンドが出ている。イスラムに対抗する気持ちが強いのか、こちらの方がいやに過激な雰囲気だ。

 キリスト教の団体はクリスマス前に活動を強化し、雑踏の中で布教やら寄付集めをしたりするが、こういうふうに、サラフィストと競合し始めると、本来の「隣人愛」が霞んで、宗教戦争のような様相を帯びてくる。

 キリスト教にもいろいろな宗派があるし、結構過激な考えの人たちもいる。これでは警官が多く出るのも当然かと、深く納得した。