ウクライナ東部ドンバス地域で軍事的緊張感が高まっている。ミンスク議定書による和平は行き詰まり、停滞を打破するため、ロシアが軍事的圧力をかけるのではないか、と予想されているからだ。
ロシアからの援軍により軍事的に優位に立った人民共和国だが、今度はウクライナ政府の封鎖を受けて経済危機に陥っており、ロシアが際限ない負担をいつまで続けられるのか注目されている。
ロシアによるドンバス介入
今日のドンバス情勢が、最初からロシア政府が主導・意図したものかは定かではない。
ドネツク・ルガンスク両州で州議会による分離的な動きが収束した4月、突如として武装した勢力が各地域の政府系施設を襲撃・占領し、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国を名乗り、主権独立国家としてウクライナからの分離独立を宣言した。
兵士の主体はロシア正規軍ではなく、また分離主義の指導部は、地元のならず者や2流エリート、他所者から成っていたことから、ロシア政府が直接関与したものではない、とする見方が強い。
指導部の人材はお粗末であるし、非承認国家化や編入を目指すのであれば、正規軍を投入して早期決着を図るはずである。
ドンバス住民の3分の2はウクライナ枠内にとどまることを希望するという世論調査結果があるように、住民と人民共和国とのつながりは弱く、外部から維持するべく、ロシア政府は日に影に人民共和国を支援してきた。
ロシア政府は正規軍人の派遣・兵器の供給を否定し続けているが、部隊章を外した兵士、認識番号を塗りつぶした兵器を送り、また「人道援助物資」を満載したトラック群をこれまで7度にわたりドンバスに派遣している。
人民共和国に対する支援は、「ファシスト軍と戦う同胞支持」という大義名分につながり、ウラジーミル・プーチン大統領の支持率につなげることができるし、軍事的にウクライナ政権に圧力をかけ、連邦制を導入させ、そのNATO(北大西洋条約機構)・EU寄り外交に制約をかけることもできる。
しかし、人民共和国は追い込まれていく。