先週の中国株式市場
―冴えない製造業PMIを背景に「滬港通」に失望売りが続きハンセン指数反落―


<先週の概況>

先週の中国株式市場はまちまちでした。ハンセン指数は前週比約2.7%下落し、2万3,437ポイントで引けました。また、上海総合指数は週間で8ポイント高の2,486ポイントとなっています。

先週のハンセン指数は、HSBC中国製造業PMIが予想に届かなかったことに加え、 17日に開始した香港と上海の相互取引が低調なことへの失望が高まり、売りが優勢となり、先々週回復した心理的な節目である2万4,000ポイントを割り込みました。


中国株式市場バリュエーション




業種別リターン



香港ハンセン指数採用銘柄 週間騰落率ランキング



<上昇>

香港ハンセン指数構成銘柄のうち6銘柄が上昇しました。1銘柄が変わらず、43銘柄が下落しました。原油安を背景に売られていた原油採掘の中国海洋石油(CNOOC)や中国石油天然気(ベトロチャイナ)が値ごろ感で買われました。中国蒙牛乳業(チャイナ・メンニウ・デイリー)も上昇し、週間で2%上がりました。

<下落>

一方、17日に開始した上海との証券相互取引が低調で、香港交易及結算所(香港証券取引決済所)には失望売りが続き、週間で10%近く下げました。中国当局が発表した10月の中国主要70都市新築住宅価格が前月に引き続き、低調な内容となったことも重荷となり、中国海外発展(チャイナ・オーバーシーズ・ランド・インベストメント)といった本土系不動産株も売られました。中国インターネット大手の騰訊HD(テンセント)も週間で6%近く下げました。

先週発表された主な経済指標

11月20日 HSBC中国製造業PMI 11月 50.0 市場予想 50.2 前月 50.4

11月のHSBC中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は50.0と、市場予想の50.2を下回り、前月の50.4から小幅に悪化しました。

内訳をみると、新規海外受注(52.8→50.5)と生産(50.7→49.5)は下落した一方、輸入価額(44→45)や生産価格(45.6→46.8)などの価格指数は上昇しました。




今後発表される主な経済指標

特に重要な経済指標の発表はありません。

マーケットビュー
―中国2年4カ月ぶりの利下げを受けて、IPO再開懸念も香港株が反発か―

先週のハンセン指数は週間で2.7%下落しました。HSBC中国製造業PMIが予想より悪化したことや、上海から香港への取引が予想よりも低調となったことが相場の重荷となりました。特に上海から香港への投資額をみると、買いの上限は1日当たり105億元に設定されましたが、その金額を使った売買は日を追うごとに減少しつつあります。初日から買いは上限のわずか16.8%にとどまり、18日には上限の7.6%に減少しました。19日と20日は約2%に落ち込むと21日には1.6%まで低下しました。期待とは裏腹に取引が膨らまないことから失望売りが優勢となり、先々週回復した心理的な節目の2万4,000ポイントを割り込みました。

テクニカル面では、先週ハンセン指数は一時的に800ポイント余り下落しましたが、200日移動平均線(2万3,261ポイント)が相場の下支えとなることが意識され、下げ渋ると金曜日には小幅に反発しました。

また、先週金曜日の夜に、中国の中央銀行である「中国人民銀行」が22日から金融機関が企業に資金を貸し出す際の基準金利を、現在の年率6%から0.4%引き下げて年率5.6%に、預金の基準金利を現在の年率3%から0.25%引き下げて年率2.75%とすると発表しました。中国が金利を引き下げるのは、おととしの7月以来、およそ2年4カ月ぶりです。加えて、ECBのドラギ総裁が物価上昇率を引き上げるために「やるべきことをやる」と発言したことから、国債の買い入れを含めた量的金融緩和に踏み切るとの思惑が強まり、欧米株も軒並み上昇しました。これらの緩和的な環境が相場にとって反発の起爆剤となるでしょう。

懸念材料としては、前週金曜日から中国で11銘柄の新規株式公開(IPO)再開が予定されており、需給面での悪化が挙げられます。但し、力強い利下げを受けて、短期的には銀行株や不動産株などの高騰が相場全体を牽引する可能性が高いと思われます。ハンセン指数は月曜日に一気に2%近く上昇し、25日の移動平均線を突破しましたが、どこまで上値を伸ばせるかがポイントとなりそうです。今後は75日の移動平均線(2万4,030ポイント)を試すような展開となるかどうかが注目されます。

フィナンシャル・インテリジェンス部 林 宇川(Tony Lin)

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