今月3日、格付け会社フィッチ・レーティングスは、ベトナムの長期外貨建て・自国通貨建ての発行体デフォルト格付けを「Bプラス」から「BBマイナス」に引き上げたと発表。格付け見通しは「ポジティブ」から「安定的」に変更された。

 同社は2010年7月29日に「BBマイナス」から「Bプラス」に引き下げており、約4年振りに戻ったものだ。背景としては、マクロ経済の安定性が増したことや対外収支の改善が挙げられている。

 なお、今、ベトナム政府はグローバル債発行で10億ドルの資金調達を目指している。地元日刊紙タンニエン(「青年」の意)によれば、シンガポール、香港、ロンドン、米国の3都市において投資家向け説明会が開催されているそうだ。

2010年当時の格付けの背景となった経済情勢を振り返る

京南ハノイランドマークタワー(ウィキペディアより)

 格付けの引き下げがなされた2010年頃の経済情勢を振り返れば、ベトナム経済は5%台の成長を維持しつつも、様々な不安要素を抱えていた。

 貿易赤字の拡大(2009年:83億米ドル→2010年:126億米ドル)、外貨準備高の減少(2009年末:168億米ドル→2010年末:124億米ドル)、銀行システムの脆弱性、国営大手造船会社ビナシン社の経営破綻*(関連企業の整理・人員削減等の事業再建)等だ。

*事業多角化の失敗や大型受注の中止等により2010年6月に86兆ドン(約44億ドル)の債務を抱えて破綻。

 当時からベトナム経済の最大の弱点は国内製造業セクターが未成熟であることだ。製造業を中心とした外国直接投資や内需拡大に伴い輸入増加となるため貿易赤字を余儀なくされる体質なのだ。

 長年、貿易赤字を直接投資(資本収支)や越僑等からの海外送金(経常移転収支)等によりカバーするという構造となっており、それは今も変わらない。

 一方、インフレ抑制は政府の至上命題だ。2010年の消費者物価指数(CPI)上昇率は9.2%だった。インフレはドル・金への資産シフト、そして、ベトナム通貨ドンの引き下げ圧力となっている。