「中央銀行には逆らうな」、は株式投資の鉄則である。中央銀行は金融政策を通して流動性(金融資産の購買力)を制御し市場価格に大きな影響を及ぼすことができる。NY市場で“Don’t fight the FED”と言われているのと同様に、日本では日銀(BOJ: Bank of Japan)のスタンスが市場価格に圧倒的影響力を持っている。
特にタイミングという点で中央銀行の判断が決定的である。1980年代以降日本株のバブルが続いていたが、それは1989年末まで破裂しなかった。なぜ日本株のバブル崩壊が1990年初頭から始まったのかと言えば、それは三重野康日銀総裁がバブル潰しの流動性抑制に踏み切ったからであった。またなぜ2012年秋まで異常な株安(マイナスのバブル)と円高が続いたかと言えば、それは白川方明日銀総裁が円高と株安を容認してきたからである。2012年末からの円安株高への大転換は(安倍政権の誕生による)白川日銀政策の変更が確実に見通せるようになったからである。
有言実行の黒田日銀
それでは今の日銀は何を目指しているのか。それは「2%の物価上昇達成と経済の持続的拡大に責任を持つこと」に尽きる。
2%インフレの達成が困難なら躊躇なく調整をする、というコミットメントは明確である。安倍新内閣のキャッチフレーズ「有言実行、実行実現」は黒田東彦日銀総裁のモットーである。さらに、黒田氏は「円安が望ましくないという考えは間違いであること、さらなる2%消費税増税が望ましいこと」、を主張した。つまり「2015年10月に予定されている消費税率の現行の8%から10%への引き上げがなされない場合、政府の財政健全化の意思に疑念が生じ、(確率は低いものの)長期金利が急上昇する懸念があるので、増税実施が望ましい」と述べた。
日銀総裁が財政マターに言及するというのは領空侵犯である、との批判は一理ある。しかしそれも「増税による景気と物価下振れのリスクは日銀が金融政策で対応する」というコミットメントと捉えるべきである。