1万メートルの上空を航行中の旅客機が撃ち落されるという考えられないような惨事が起きたウクライナ。ハマスが打ち込むミサイルに、イスラエルが空爆や戦車までも投入する地上戦で応じる非対称の戦いが激化するガザ地区・・・。

戦争を始める正義とそのウソ

【写真特集】ウクライナのマレーシア機墜落現場

ウクライナで撃墜されたマレーシア航空機の火を消す消防隊員〔AFPBB News

 今や至るところで高度な殺傷能力を持つ兵器が使われている現実に心は沈む。

 テレビやネットに次々と流れ出す国際ニュースは、ロシア、ウクライナ双方が自らの正当性を語る。

 しかし、その「証拠」たるものが示されても、公正な目で見られるはずの非当事国民たる我々日本人は、「権威あるはずの人」のあまりにも多くのウソ、捏造にさらされ続けている今、疑念を抱きがちだ。

 戦いへと向かう者は、何かしら「正当な」理由を掲げる。自由のため、正義のため、自国民のため、第1次世界大戦途中参戦の米国ウッドロウ・ウィルソン大統領は「War to end all wars(すべての戦争を終わらせるための戦争)」とさえ言った。

 しかし、そんな大義や契機となった事件は口実(Pretext)に過ぎず、戦いの理由が全く別のところにあることも少なくないことを、我々は歴史のコンテクスト(Context)で知っている。

 18世紀末のロシア・スウェーデン戦争もそんな一例だ。越境したロシア兵がスウェーデン守備兵を攻撃した「事件」から始まった戦いだが、その「事件」はスウェーデン王グスタフ3世が仕組んだ自作自演劇。

 大国ロシアとの戦いに消極的な議員もいるなか、議会の承認なく開戦する権限のない国王が、「自衛戦争」として開戦へと進んだものだった。

 1939年8月末、当時ドイツ領だった現ポーランド領グリヴィツェのラジオ局が襲撃された「グライヴィッツ事件」もよく知られた自作自演劇である。

 時を同じくして国境付近で多発した放火事件ともどもポーランド人の仕業とされ、ドイツは「自衛権」を理由としてポーランドに侵攻、第2次世界大戦は始まった。しかし、それらの「事件」は「ヒムラー作戦」と呼ばれるドイツの自作自演劇。