イスラエル軍が、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの拠点への空爆を本格化している。イスラエルに向け発射されているロケット弾に対する報復とされ、予備役兵を招集するなど、地上戦への準備も進められているという。
米国内に映像が流れたパレスチナ系米国人への暴行シーン
先月末、ユダヤ人少年3人の遺体が見つかり、イスラエルはハマスメンバーの犯行と断定した。ところが、今月に入り、今度は誘拐されたパレスチナ人少年の遺体が発見され、双方の市民の間に怒りが充満していた。
イスラエル当局はパレスチナ人少年殺害の容疑者の身柄を複数拘束する一方で、東エルサレム来訪中だった殺害された少年のいとこであるパレスチナ系米国人少年を暴行した末、身柄を一時拘束。
米国ABCテレビは、イスラエル治安要員から暴行を受ける場面とされる近隣住民撮影の映像を放映した。
そんな映像を見て、思い出すのが「ロス暴動」。1991年3月、黒人男性がスピード違反で捕まり、白人警官多数に殴打される様をたまたま撮影していた近隣住民のビデオ映像が全米に放映された。
ところが、翌1992年4月、黒人のいない陪審員が出した警官への評決は無罪。すぐさま、ロサンゼルス市街で、黒人が多数暴徒化したのである。
半年後、米国公開となったスパイク・リー監督作『マルコムX』(1992)の冒頭にその暴行場面はあるが、バックには急進的公民権運動家マルコムXの「我々はアメリカン・ドリームではなく、アメリカン・ナイトメアを見た」と白人を糾弾する演説の音声が流れる。
その時既に、ロス暴動を予見していたかのような映画を、リーは発表していた。
深層が見えてくるその映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)が示すのは、米国の被差別社会が、黒人、ヒスパニック、韓国系などにさらに分断されている現実。
メーンタイトルには大物ヒップホップグループ、パブリック・エナミーの代表曲「Fight the power」が流れ、Protest song(Rebel song)としてもよく知られるこの曲が、抑圧された者の怒りを代弁する。