最近、スウェーデン国防省が主催する「第10回化学・生物防護に関する国際シンポジウム」(CBWシンポジウム)に参加する機会を得た。
都合4日間、2つの会場に分かれて同時並行で行われる14テーマの分科会と、併設する企業展示ブースで精力的に情報収集してきた。
ここで得た情報から、欧州正面における産官学軍の連携による欧州防衛のCBRNテロ対処構想(米国を含む)と、我が国のテロ対策を対比してみたい。我が国がどれほど後れを取っているのか、そして今後の方策はどうあるべきかなどについても触れてみたい。
1.CBRN(シーバーン)とは?
初めに表題の説明から。CBRNとは、C(Chemical:化学兵器等)、B(Biological:生物兵器等)、RN(Radiological and Nuclear weapons:放射性物質及び核兵器)など、主に大量破壊兵器を示す最近人口に膾炙する略号である。
目次
- 1. CBRN(シーバーン)とは?
- 2. なぜCBRN対処か?
- 3. 主要国におけるCBRNテロ対策体制、構想など
- 4. 我が国のCBRNテロ対処と国民保護
- (1)国民保護法制定の経緯
- (2)国民保護計画および訓練の現状
- (3)問題点と将来の課題
・運用ポリシー上の問題点
・訓練上の問題点
・将来の課題
- 5. おわりに
一昔前はABC(AはAtomic Bombのこと)あるいはNBCと称されており、ナイーブな我が国では総称として「特殊武器」と呼ばれている。
先進各国の事態認識としては、第2次大戦型の毒ガス、化学兵器から危険物質を扱う工場、施設へのテロまで想定した産業毒性物質まで含む「C」。
炭疽菌や天然痘、ある種出血熱の細菌、ウイルスなど人体への脅威となる特定の生物物質から、人体以外の動植物に壊滅的な打撃を与える生物テロ(アグロテロ)までを含む「B」。
低出力の小型核爆発装置から各種放射性物質を爆発により散布する、いわゆる汚れた爆弾(Dirty Bomb)を含む「RN」テロまで、その事態を幅広く捉えている。