やや旧聞に属するが、昨(2013)年11月、在京フィンランド大使館でビジネスセミナーが開催された。「欧州のハブ、ロシアへのゲートウェイ」と題されたセミナーは、フィンランドから外務省対外経済関係担当次官が来日する熱の入りようだった。

 さらに興味深いのは同セミナーに対しては在ヘルシンキ日本大使館が積極的にサポートしていることである。

日本とフィンランドが組んでロシアビジネスの拡大狙う

メインステージでのオープニング。Skolokov Foundation のベクセルベルグ総裁スピーチ

 フィンランドと日本がタッグを組んでロシアビジネスを開拓しようというのは、特に現在のようなロシアを巡る国際情勢が困難な時期にあっては大いに検討の余地がある。

 なぜフィンランドか?

 フィンランドと言っても日本には残念ながら馴染みの薄い国である。多くの日本人にとってはサンタクロースとムーミンの国というイメージしか湧かないのではないだろうか。

 余談だが、在京フィンランド大使館員の名刺にはムーミンの登場キャラクターがプリントされている。大使の名刺ではスナフキンがアコーディオンを奏でている。クールジャパンにもこれくらいの徹底ぶりが必要かもしれない。

 フィンランドはロシアの北方に位置し、国土面積は34万平方キロメートルと日本と大差ないのだが、人口はわずか530万人の国である。

 中世から冷戦終結に至るまでスウェーデンとロシア(ソ連)という両大国の支配を受け、特に第2次大戦後は自由主義・資本主義体制を維持しながらソ連との政治的関係も維持するという非常に難しいバランスを維持し続けた国である。

 1984年、当時の中曽根康弘首相が「日本が防衛努力を怠ると、フィンランドのようにソ連の属国になる」と発言して物議を醸したことがあったが、フィンランドのソ連との苦渋の付き合いは、現代になって両国ビジネスに大きな成果を生んでいる。

 フィンランドの有利な点はこうした歴史的背景ばかりではない。