2014年2月のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ政権崩壊と、それに続くロシアのクリミア併合で始まったウクライナ危機は、依然として収束の兆しを見せていない。騒擾の続くウクライナ東部の情勢が今後どこへ向かうのか、ロシアによる天然ガスの供給停止や軍事介入はあるのか、等に今や世界中が注目しているところだ。
だが、こうした派手な事態ばかりが注目される一方で、今回のウクライナ危機ではもう1つの重要な問題もひっそりと持ち上がってきている。
産業の結びつきが強いウクライナとロシア
ロシアとウクライナの産業間の結びつきを巡る問題だ。ことに本稿では、軍需産業の面からこの問題について考えてみたい。
ウクライナは帝政ロシア時代から重工業や炭坑で栄え、ソ連時代にはスターリン体制下でさらに重工業化が推し進められた。
こうしたソ連時代のサプライチェーンはソ連崩壊後も簡単になくなってしまったわけではなく、依然としてロシアとウクライナの産業は密接に結びついている。
そもそもウクライナの全輸出額(約820億ドル: 2012年)中、ロシアへの輸出額は230億ドルを占めており、ロシアは最大の大口輸出先である。
特にウクライナの主要輸出産品である機械製品の約4割、鉄鋼・鉱物製品の約2割をロシアは輸入しており、依然として産業の多くがウクライナの原料、製品、コンポーネントに依存していることが分かる。
機械製品について言えば、特に目立つのが鉄道関連だ。
例えばウクライナのルガンスク州にある鉄道車両メーカー「ルガンスクテプロヴォーズ」はロシアの鉄道車両メーカー「トランスマッシュ・ホールディング」の傘下企業となっており、一般の電車や、貨物列車用の機関車等を生産している。これらの鉄道車両はウクライナの機械輸出額のおよそ半分を占めており、その大部分がロシア向けだ。
そのほかの機械製品や鉄鋼製品も大部分はロシア向けに輸出されている。そして、こうした事情は軍需産業も例外ではない。