第1回大学対抗カンボジア・ロボットコンテスト(以下ロボコン)がいよいよ開幕した。
予想を上回る参加学生たちの活躍で、会場は熱気と興奮に包まれたまま、午前中の1回戦は終了。昼食休憩を挟んで2回戦開始となるのだが、私には気がかりなことがあったのだ。
2回戦の参加チームは揃うのか、そして結果は・・・
カンボジア人は、こうした勝負事では勝ちにこだわるあまり、「負ける」とわかったら最後、途中で参加するのをやめて帰ってしまう、と国営テレビ局の副局長“殿様”は当初から言い続けていた。
1回戦で完走できなかったチームは約半数。もし彼らが昼食休憩の間に帰ってしまったら、こんなに盛り上がった雰囲気がぶち壊しになってしまう。
しかも、そうした懸念があったにもかかわらず、私は2回戦にあたっての参加チームの再登録の指示をスタッフたちに出していなかったのである。数組帰っただけでも、恐らく進行は大混乱になる。どうしよう・・・?
しかし、昼食時にも審査のとりまとめやら、スコアの集計チェックやらに追われ、対策を考える時間もない。そうこうするうちに2回戦スタートの時間がやって来た。
ところが――2回戦が始まっても、誰1人として帰る学生はいなかったのである。
1回戦でピクリとも動かなかったロボットを片手に2回戦に登場し、「やっぱりまだ動きません」といかにも楽しげに、しかも堂々と言った学生たち。1回戦で失格してしまったのに、きちんと再調整して2回戦では見事に走りきらせた学生たちもいた。
スタートラインを前に動かないロボットを、制限時間2分以内で何とか走らせたいと、工具を取り出して調整する学生たちもいた。あと10秒のカウントダウンが始まっても、その手は止まらず、表情は真剣そのものだった。
1回戦では調子が良かったが、昼食を挟んで調子が悪くなり動かなくなってしまったと言って、大事そうにロボットを持ってきた学生たちもいた。スタートラインに置いた途端にくるくると回ってしまうそのロボットを、あきらめずに何度も何度もスタートラインに置き直す。それは制限時間の2分間続いた。
そこに共通するのは、自分が苦労して作り上げたものを見守る愛おしげな視線だった。そして、参加した誰にも「笑顔」があった。