リチャード・アーミテージ氏は安倍晋三首相の靖国神社参拝に反対ではなかった――。
日米関係に関わる米国側の人物でも最も知名度の高い1人、アーミテージ元国務副長官に安倍首相の靖国参拝についての意見を正面から問う機会があった。彼の答えは、首相の参拝に理解を示すというものだった。日本の一部メディアの報道とは異なる対応だったのだ。
日米安全保障に関する大規模なセミナーが3月21日、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)で開かれた。主催は「パシフィックフォーラム CSIS」と「日本国際問題研究所」などだった。パネリストとして壇上で意見を述べたのは、米国側からアーミテージ氏とジョセフ・ナイ氏(ハーバード大学教授)、日本側からは東大教授の高原明生氏と元外務省の岡本行夫氏である。セミナーのテーマは日米安全保障関係であり、当然ながら4月後半に予定されるオバマ大統領の訪日についての議論も含まれていた。
安倍首相の数々の「成功」を礼賛
アーミテージ氏は基調報告で、まず安倍首相の実績を「成功」という言葉を強調しながら礼賛した。
「いまの世界では安倍首相ほど短期間に多くの政策目標を達成した指導者はまずいない。安倍政権は防衛費を10年ぶりに増額し、国家安全保障会議を設置した。特定秘密保護法を成立させ、防衛ガイドラインも前進させた。TPP加盟への姿勢をも明確にする一方、東南アジア外交を強化して、日本の対外イメージを向上させた。いずれも日米関係、特に日米同盟を強化する政策として米国が従来望んできた動きだ。安倍首相のこれらの成功を強調したい」
こうして安倍首相への前向きな評価を惜しまないのである。アーミテージ氏は民主党の現オバマ政権とは一線を画する共和党側の人物である。とはいえ、米国側の対日折衝では超党派の重みを発揮する。そんな人物がここまで安倍政権を賞賛している事実を、日本側も知っておくべきだろう。
だが、アーミテージ氏は、安倍政権の日米同盟強化策を高く評価しながらも、日本ではオバマ政権の対日防衛誓約への不信が高まっていると指摘した。