中国で年に1度の全国人民代表大会(「全人代」、日本の国会に相当する)が開かれた。全人代の開会中、人民銀行の周小川行長は記者会見を行い、1~2年で預金金利を自由化することができるだろうと金利の完全自由化を示唆した。
分かりやすく言えば、金利はお金の値段である。市場経済では、モノの値段は自由化されているのに、カネの値段を規制するのは不合理だ。モノの値段を自由化する目的はその需要と供給を調節するプライスメカニズムを機能させるためである。カネの値段である金利を自由化すれば金融システムの金融仲介を効率化すると考えられる。金融仲介とは、貯蓄主体の家計から投資主体の企業に資金を仲介する金融システムの役割である。
金融仲介の基本は、経営効率がよく収益性の高い企業に、より安い金利で資金を仲介するということである。中国の場合、計画経済の時代に、金融機関の金融仲介は政府の策定する経済計画に則って行われていた。すなわち、貸出先企業の効率や収益性と関係なく金融仲介が行われていた。
「改革開放」政策以降、実体経済の市場経済化が徐々に進んだが、金融システムの市場経済化が大幅に立ち遅れている。金利規制が続いている関係、金融機関の競争が妨げられている。金融システムの効率化が遅れたことが、実体経済の効率化に遅れをもたらしている。
金利規制を続ける政府の思惑
中国はなぜ金利規制を続けてきたのか。それを解明するためには、金利規制の一番の受益者が誰なのかを明らかにすればいい。
先に結論を述べてしまえば、現行の金融制度で最も恩恵を受けているのは国有銀行である。