製薬会社のノバルティスが、自社の白血病治療薬タシグナの臨床研究に関与していた問題について、また2つほど大きな報道がなされた。

 2月7日5時09分にはNHKがノバルティスの社員が臨床研究のデータ解析を行っていた可能性が高いと報じ、2月8日2時30分には毎日新聞が「ノバルティスファーマ:学会発表も会社関与? 資料に社名」として、学会発表の資料までノバルティスの社員が作成していた疑いがあると報じた。

 この臨床研究は、「東京大学血液・腫瘍内科」と、同医師らが運営していることとなっておりノバルティスが深く関わっていた「東京CMLカンファレンス(以下TCC)」、によって行われている。

 この問題について現在、東京大学で内部調査が進められている状況であるが、今回は臨床研究を主導した、東京大学血液・腫瘍内科の内部の責任の所在について検討してみたい。

ノバルティスに関わった医師たち

 今回の臨床研究の概要については、UMIN-CTRというサイトで誰でも確認することができる。

 責任研究者の欄に記載されているのは「黒川峰夫」東京大学血液・腫瘍内科教授である。今回の臨床研究で使用された実施計画書によると、黒川教授は「東京大学血液・腫瘍内科」側の研究代表者であるとともに、「TCC」の代表世話人でもある。

 もっとも、教授が実際に臨床研究の進行を行うわけではなく、そうした業務は通常、教授より若手の研究者が行う。今回の臨床研究で内部を運営していたのはA医師である。A医師は臨床研究の実施病院との連絡や、臨床研究の実質的な運営を黒川教授の下で任されていた。

 そしてA医師が臨床研究を実施する各病院の医師に送ったメールの、添付ファイルの文書のプロパティ欄における製作者の会社名が「Novartis」となっていた。

 またTCCは以前よりノバルティスのMR(medical representative=医薬情報担当者)が関わっていたとされている団体であるが、A医師はそちらの取りまとめも行っている。