マット安川 今回は経済博士の小山和伸さんを迎え、アベノミクスやTPPの現状、原発政策など今年の経済界を中心に予測・解説していただきました。

「アベノミクス」は正しい方向に進んでいる

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:小山和伸/前田せいめい撮影小山 和伸(おやま・かずのぶ)氏
神奈川大学経済学部教授。経済学博士(東京大学)。横浜国立大学経営学部卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。専門分野は、経営管理論、組織論、戦略論、技術経営論。著書に『救国の戦略』(展転社)、『戦略がなくなる日』(主婦の友新書)など。(撮影:前田せいめい、以下同)

小山 安倍(晋三)政権の経済政策「アベノミクス」は正しい方向に進んでいると思います。第1の矢が金融緩和。2番目は柔軟な財政政策ということで、これは公共投資です。東北の復興が遅れていましたから、公共投資による景気の浮揚が期待できます。

 第3は成長分野への集中投資ですが、これは中小零細を含めた企業に対する投資ということになると私は思います。そして、これは第2の矢から流れてくる復興のための公共投資とリンクすべきだと思います。要するに復興のための公共投資を通じて、成長分野にも投資すると。

 一例として、いま津波を防止するために巨大な堤防を造るということを盛んにやっていますが、防潮堤が高すぎて景観がダメになるといった問題が言われています。これはいろんな知恵を働かせる余地があると思います。

 例えば、防潮堤の高さが上下に動くようにし、津波が来た時に上がるとか。日本の技術力があればできないはずはないと思うんです。いろいろ知恵を出せば、それがテクノロジーの開発にもつながります。

 消費税増税については、時期的にちょっと早いんじゃないかと思っています。財務省に押し切られた感じですが、本当ならもう半年待てという気持ちです。

 ただ、日銀の黒田(東彦、総裁)さんは、もし景気の腰折れがあるようだったら、金融の追加緩和をやると言っています。私も増税によってそれほど大きなデフレ効果はないと、祈るような気持ちでもありますが、そう思っています。

原発を再稼働し、技術の海外流出を防げ

 円安による輸入インフレについては、貿易赤字で特に大きいのがエネルギーの問題です。東日本大震災で原発を止めた結果、LNG(液化天然ガス)や石炭、石油などのエネルギー輸入量が大幅に増大しました。

 当面はどう考えても、安全性の確認された原発の再稼働は現実的に避けて通れません。大事なことは、安全をいかに確保するかということであって、初めから全部やめちゃうんだというのは暴論以外の何ものでもないと思います。安全対策について冷静に考えて判断すべきで、感情論で議論していてはいけないと思います。