本記事は12月18日付フィスコ企業調査レポート(テクノスジャパン)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 
佐藤 譲
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ビッグデータ関連事業で将来の成長を加速

 テクノスジャパン<3666>は、ERPパッケージを中核とする基幹業務システムの導入支援サービスを手掛ける。少人数精鋭主義を採用しており、システムの開発力と提案力は国内でもトップクラスの評価を得ている。新事業領域として「ビッグデータ」関連事業に注力している。

 2013年10月31日付で発表された2014年3月期の第2四半期累計(2013年4-9月)の連結業績は、売上高で1,990百万円、営業利益で160百万円となった。会社計画比では売上高が1.6%減と若干未達となったものの、営業利益11.9%増など全体的には順調に推移したと言える。通期業績は、子会社の設立費用や優秀な人材の確保・育成に関する費用の増加、社内情報システムの刷新など先行投資的な費用を見込むなかで、売上高に関しては第4四半期の半ばまでほぼ見通しが立っている状態にあり、期初計画の達成は射程圏内に入っていると言えよう。

 進行中の中期3ヶ年計画では、今後、主力の国内ERPの更新需要が見込まれるほか、海外進出企業に対するERP導入支援を強化し、新事業領域として「ビッグデータ」「モバイル」「クラウド」の関連事業の拡大を進めていくことで、2015年3月期以降に成長を加速させる見通し。

 新事業領域のなかでも、とりわけ「ビッグデータ」関連は同社が2年前から準備を進めてきた戦略分野である。ビッグデータの国内市場規模(テクノロジーやサービス)は、2012年の206億円強から2017年には1,000億円を突破する見通しと、高い成長が見込まれる。一方で、ビッグデータに関する成功事例は、まだ一部の先駆的な企業に散見されるのみといった状況で、依然として黎明期にあるとも言える。

 このようななかで、同社は2013年5月に米シリコンバレーで「Tecnos Research of America」(TRA)を設立、9月よりビッグデータを含む最新のICT動向に関する情報収集を始めたほか、10月にはビッグデータ専門子会社「テクノス・データ・サイエンス・マーケティング」(TDSM)を設立した。同社がこれまでのERP導入支援などで培ったコンサルティング能力と、今後TRAやTDSMから得られる最新のビッグデータの分析ノウハウとを組み合わせることによって、いち早い事業化を目指す。ビッグデータ関連事業の成長によって、現在の主力であるERPパッケージ導入支援事業の拡大につながることも期待でき、引き続き同社のビッグデータ関連事業の動向には注目する必要がありそうだ。

Check Point

●大企業・製造業向けに強く、更新需要8割と安定収益源を確保
●2016年3月期にビッグデータ関連で売上高10億円を目指す
●中計ではビッグデータなど新事業拡大で経常利益率10%維持へ

会社概要

大企業・製造業向けに強く、更新需要8割と安定収益源を確保

(1)事業概要

 同社は独立系の情報システムサービス会社であり、主にERPパッケージを中核とする基幹業務システムの導入支援やコンサルティングサービスを展開している。独SAP社をはじめとするERP(※1)パッケージベンダーとビジネスパートナー契約を結び、自社開発品や他社開発品などを組み合わせながら、顧客企業に最適なソリューション(※2)を提供している。特に、業種別や業務別に最適化したテンプレート(ひな形)であるFactシリーズは、開発から導入、運用までの期間短縮を実現するツールであり、同社の強みとなっている。導入企業は大企業を中心に100社以上にのぼり、技術力やプロジェクトマネジメント力は業界大手に引けを取らない実力を持つ。

 ERPパッケージ製品別の売上構成比(2013年3月度実績)は、SAP社のERP製品が約81%と大半を占めているが、企業の多様なニーズに対応するため、Infor社やオラクル社、東洋ビジネスエンジニアリング社<4828>のERP製品も扱っている(MCFrameなど一部モジュールをSAP社のERP製品に組み込んで提供する場合は、SAP社のERP製品としてカウント)。

※1) ERP(Enterprise Resource Planning):企業内のあらゆる経営資源を有効活用し、効率的な経営活動を行っていくための経営手法・コンセプトのこと。また、これを実現するための統合型ソフトウェアを一般的にERPパッケージと呼ぶ。

※2) ソリューション:顧客企業の問題を解決する情報システム、その情報システムに関連する要素全般(ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、運用サポート人員など)、または必要に応じてそれら要素を適宜組み合わせて顧客企業に提供するサービス全般を指す。