小泉純一郎、安倍晋三の両首相時代、6年余の間に、日本の安全保障の法的な枠組みは大いに改善された。平成15(2003)年6月に武力攻撃事態対処関連3法案が、翌平成16(2004)年6月には国民保護法をはじめとする有事関連7法が成立し、いわば普通の国に脱皮する直前に至ったのである。
この政治の流れが続いていれば、各種の基本法や憲法等の改正にまで行き着いただろう。しかしながら、安倍首相の突然の辞任とそれに引き続く政治の混乱、政権交代により足踏み状態に入ってしまったのは残念至極である。
どのような課題が残っていたのかを本稿で整理してみたい。これらの課題は、ある意味では今までに解決しようとしても、論点様々、議論百出でまとまらなかったものであり、一気に解決とはいかないかもしれない。
本来、内政はいざ知らず、外交・安全保障に関しては政権が交代してもその継続性が担保されるべきである。与野党が共通の土俵に立って、これら残された課題を解決していただきたいものである。
自衛隊の海外派遣恒久法
1 自衛隊の海外派遣の状況
自衛隊の海外派遣は、国際緊急援助隊派遣法(S62.9.16)及び国際平和協力法(以下PKO協力法)(H4.6.19)の施行に伴い、国際平和維持活動として4回、人道的な国際救援活動として6回、国際緊急援助活動として8回派遣されており、その状況は下表の通りである。
区分 | 主な派遣地域 |
---|---|
国連平和維持活動 (PKO協力法) |
(1)カンボジア、 (2)モザンビーク、 (3)ゴラン高原、 (4)東チモール |
人道的な国際救援活動 (PKO協力法) |
(1)ルワンダ、 (2)インドネシア、 (3)パキスタン、 (4)ヨルダン、 (5)イタリア・ヨルダン、 (6)ハイチ*1 |
国際緊急援助活動 (国際緊急援助隊派遣法) |
(1)ホンジュラス、 (2)トルコ、 (3)インド、 (4)イラン、 (5)インドネシア、 (6)パキスタン、 (7)インドネシア、 (8)ハイチ |
*1=ハイチ地震に伴う自衛隊の派遣は、当初は国際緊急援助隊医療援助隊として、爾後はPKO協力法の人道的な国際救援活動として実施されている。
これらのほかに自衛隊法第99条(現第84条の2)に基づく掃海活動(1991年4~10月)が行われているが、いずれも、いわば恒久法に基づく自衛隊の派遣であった。