2013年の10大ニュースを決めるにはまだ少し早いが、国際ニュース部門では元CIA(中央情報局)職員エドワード・スノーデン氏の亡命騒ぎは確実にランク入りすることだろう。

 問題のスノーデン氏は現在31歳。陸軍特殊部隊に入隊するも事故で除隊し、CIA局員となる。その後、2008年以降は民間企業社員からの派遣要員としてNSA(国家安全保障局)に勤務したが、PRISM計画による個人情報収集の実態を知るとその内実を暴露したうえ、大量の機密文書を収めたラップトップコンピューターとともにロシアへ亡命した。

モスクワで買い物をするスノーデン氏

「機密文書もう持っていない」、ロシア亡命の元CIA職員

内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した米元当局者らとロシアで会食するエドワード・スノーデン容疑者(2013年10月9日撮影)〔AFPBB News

 現在もスノーデン氏はモスクワにいると見られ、ロシアのネット上では最近、スーパーで買い物をする同氏の写真が出回った。

 もっとも国家が同盟国や自国民の情報収集を行っていること自体は(その是非は別として)さほど珍しいことではない。

 むしろスノーデン問題が余波を広げたのは、皆が暗黙の了解の内に行っていたこうした諜報活動を白日の下に晒してしまったことであろう。

 最近では米政府がドイツのアンゲラ・メルケル首相の携帯電話を盗聴していたことが発覚し、大スキャンダルとなったが、ドイツ側にとっても全くの青天の霹靂であったわけではないはずである。

 こうした諜報活動は、当然、ロシアも行っている。

 もともとソ連の旧KGB(国家保安委員会)や軍GRU(参謀本部情報総局)は盗聴や通信傍受による情報収集活動を活発に行っていた。

 例えばKGBの第8総局は自国内における電話盗聴などを通じた諜報活動を担当しており、ソ連時代にモスクワに留学していた筆者の知り合いなどは電話の音質が悪いので大声で喋っていたところ傍受していたKGBのオペレーターから「うるさい!」と怒鳴られたという逸話まである(この点からして、当時のソ連には盗聴を隠すという意識はなかったようだ)。

 また、KGB第16総局やGRUは社会主義陣営の同盟国と共にSOUD(統合敵データ記録システム)を形成し、世界中の在外公館や通信傍受基地、偵察艦、通信傍受衛星などなどの情報を統合してグローバルな情報収集ネットワークを形成していた。