4月に一時帰国した後の北京への帰り道。羽田空港に早めに到着、搭乗手続きを早々と済ませ、中国の友人に頼まれていた大量の化粧品を購入するため、覚悟を決めて店に入った。
「おい、その棚の商品を全部くれ!」
中国人の消費欲というか、物欲は半端ではない。多くの日本企業もオフィスを構える北京の中心地CBD(Central Beijing District)に位置する国貿タワーの1階入り口にルイ・ヴィトン専門店がある。
ヤクザにしか見えない大男が若い女の子数人を引き連れながら、何のためらいもなく「そこの棚のバッグ全部くれ」と意気込む。その手の客に慣れきった店員が冷静極まりない様子で「かしこまりました」と対応する。
数百万円、時には1000万円にも及ぶディールが当たり前に繰り広げられている。いかに中国人の消費欲が大きいか分かるだろう。
さて、羽田空港の店に入ると、商品の紹介がすべて中国語で書かれていることに気づいた。店員が中国語で話しかけてきた。筆者は中国人にしか見えないということか。
若干落胆したが、そのまま中国語でやり取りし、会計を済ましたところで日本語で話しかけてみた。すると、驚くほど流暢なジャパニーズが返ってきた。
店員も客も中国人、場所は日本
「あなたの中国語はお上手ですね。中国で暮らしているんですか?」
「はい、6年くらい。あなたの日本語も十分お上手ですよ。ここで働いているんですか?」
「いえ、今日本の大学に留学していて、週に3日ここでバイトしてるんです。留学生って生計立てるの大変じゃないですか」
この来日4年の店員(22)によると、顧客のほとんどが中国人であるという。外国人が行き交う国際空港とはいえ、日本の土地であることに変わりはない。中国人同士が売買している光景を前に、考え込んでしまった。