今年の「全日本学生フォーミュラ大会」は本当に“熱かった”。

 総合結果だけ見ても、3種の「静的審査」(事前のレポートから実車を前にしての発表と質疑応答まで)と5種の「動的審査」(実際に走行して性能を競う)で獲得した得点の総計が、1位857.12点、2位854.15点と、わずか3点弱の僅差である。

 しかも、最終競技となる「エンデュランス」(1キロメートルほどのコースをドライバー交替をはさんで20周、全開で走行して、そのタイムと燃費を競う)の前までは、暫定首位に立っていた大阪大学とそれを追う京都大学の差は31.43点あった。それを最後の競技で一気に逆転したのである。

 この「エンデュランス」、つまり1周1キロメートルほどの曲がりくねったコースを20周連続して全力走行、しかも10周走行したところでドライバーの交替が義務づけられているという種目は、学生フォーミュラの競技のハイライトであり、チームにとっては1年間の活動の総仕上げでもある。

「リベンジ」に臨んだ京都大学チーム

 京都大学チームは鋼管でつくることが基本になっているフレーム(車体骨格)をアルミ合金管で組み上げ、しかも鉄よりも難しいアルミ素材の溶接を学生たち自身が習得し、継承してきた。また、モーターサイクル用のエンジンと変速機をそのまま使っている今日の学生フォーミュラでは、そこから後2輪への最終減速・駆動分岐にチェーンを使うのが定石なのだが、あえて一般の4輪車と同じベベルギア(傘歯車)による減速・方向転換のメカニズムを、これも学生たち自身が設計し、それを収めて回転力を受けるケース(外郭部品)は自分たちの手でアルミ素材の塊から削り出すなど、基礎的な要素設計・製作において独自のアプローチを続けている。進化と熟成の積み重ねという意味でも着実なステップを踏んできていて、ここ2~3年は優勝候補の一角に数えられる存在となっていた。

自分たちが設計し、つくり上げてきたマシンで動的審査に臨む。その最初のステップである「車検」を受ける京都大学チーム。彼らの歴代のマシンの特徴であるアルミ合金溶接構造の骨格が剥き出しになっている。難しいアルミ合金の溶接も学生自身の手による。モータースポーツのプロフェッショナルが設計・製造したものでないだけに「安全に走行できるか」についてのチェックは厳しい。(撮影:筆者)
拡大画像表示

 しかし2011年、2012年と続けてエンデュランスでリタイア、総合順位では中団に沈むことが続いていた。どちらもエンジンの制御系のちょっとした問題が連続走行の中で致命傷となった。

 特に2012年は、設計と製造開発の内容を評価する「デザイン」、生産した場合のコストを事細かく算定する「コスト」、ビジネス提案を行なう「プレゼンテーション」という「静的審査」も、そして実際にマシンを走らせてその実力を競う「動的審査」の「アクセラレーション」(加速試験)、「スキッドパッド」(円旋回)、「オーククロス」(コース周回1周のアタック)と確実に得点を積み重ねて、エンデュランスではペースを抑えて確実に走りきれば優勝・・・という状況からのリタイアだった。