マット安川 今回はゲストに憲法学者・小林節さんを迎え、停滞している改憲論議の現状や安倍政権の憲法草案の解説まで、詳しくお聞きしました。

自民党は憲法96条改正を諦め、解釈改憲へ

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:小林節/前田せいめい撮影小林 節(こばやし・せつ)氏
憲法学者、慶應義塾大学教授、弁護士。日本海新聞・大阪日日新聞客員論説委員。近著『「憲法」改正と改悪』など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)

小林 安倍(晋三、首相)さん個人は、憲法改正は自分の歴史的使命だと言っています。そこで5月3日の憲法記念日のタイミングで憲法96条の先行改正をぶち上げましたが、我われの反論でつぶれてしまった。

 日本中の憲法学者がいま、遅ればせながら全国の大学で96条のシンポジウムをやっています。96条については自民党も諦めたと思います。しかし、9条を改正できないなら解釈改憲でということで、自民党はいま動いています。

 ただ、例えば尖閣の問題についても、なにも集団的自衛権などと大風呂敷を広げる必要はないんです。尖閣諸島を守るためには、簡単な話で、武器の使用基準を変えればいいんです。

 撃たれたら撃ち返すという交戦規定をやめて、狙われたら撃ち返すという世界の標準にすれば、尖閣は自衛隊で十分守れるし、その体制があれば、いざという時にアメリカが出てきます。自衛隊で国を守ろうという構えを見せたら、米軍は来ないわけにはいかないですよ、在日米軍基地を守るために。

 そもそも、日本列島はアメリカ側の橋頭保であり、アメリカにとって必要なんです。極端な話、日本がダラしなくて守り切れなければ、アメリカがやって来て占領してでも守ると思うんですね。

 日本が中国のものになってしまったら、太平洋がアメリカのものじゃなくなるからです。いまは日本列島のおかげで、太平洋はアメリカのものなんです。ですから、日本はあまり慌てなくてもいい。

 とにかく、自民党の憲法大好きな20~30人の「憲法マニア」と私が呼んでいる議員たちは、憲法を使って国民に道徳の枠をはめたがっている。

 自分が道徳だと思うものを、憲法を使って、国民に押しつけようと。しかも、それのどこが悪いのかと思っているところが、私は怖い。いまの自民党の主流派は、憲法を使って、政治家が国民をしつけるという考えですから、これでは北朝鮮みたいな国になってしまう。私は絶対に受け入れません。