ロンドンに住む妹家族が借りている家は、築100年。工事したガス管には、もう存在しない会社のロゴが刻印されていたそうだ。

古いものをそのままに、モダンも融合するロンドンのメディア事情

ロンドン・ケンジントン地区のカフェ「The Maffin Man」。紅茶1.90ポンド(約300円)。店員はポーランド人だった(撮影:筆者、以下同)

 レンガ色に白い出窓のお屋敷マンションが立ち並ぶケンジントン地区。

 ラベンダーのつんとした匂いが漂うホテルを出る。霧雨にかすむガス燈の灯りに土埃が舞い上がり、ステッキに黒帽子の人が行き交う、そんな気分になる街角。

 それでも、その先にはモダンなカフェが古ぼけた建物の1階に収まっていたりする。古いものをそのままに、新しさも融合する感じ。

 そんなロンドン。

 テレビや新聞、それにインターネット。メディアもオールドとデジタルが同居している。イギリスOfComのリポートによれば、91%の大人が週1回はリビングでテレビをつける。この割合は10年前より10%も上がっている。

 しかし、これはテレビが1台しかない家庭(41%)が増えているからであろう。5~15歳の子供が自分の部屋にテレビを持っている割合は17%も減って52%しかない。

 テレビを見ながらセカンドスクリーンでソーシャル活動をしている人は25%いる。しかし、49%はテレビとは全く関係ない画面を見ている。

 おそらく、こういうことだろう。

 大人はテレビを見ているが、子供はほとんど見ていない。

 メディア消費の違いを「世代」で説明できる社会では、オールドメディアからデジタルへの移行は時間とともにゆるやかに進む。アメリカのように、移民や起業家など違うカルチャーが入り込み、新たなサービスを生み出していくのとは違う環境だ。

 そんなロンドンで開かれた「ad:tech LONDON 2013」。オールドメディアの存在感が強い国で、デジタルはどんな考え方で行動しているのか――そこに興味があった。