改善という言葉から連想される皆さんの印象は、ポジティブだろうか?

 日本における従来の改善活動は、まさに企業競争力の源泉と感じられ、活動の活性化は個人や企業の業績向上に貢献するという実感を持てた。かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれた現場の知恵の結集力は他に類を見ず、その秘訣を世界中がこぞって学びに来た時代があったのは事実だ。

 結果として、“KAIZEN”という言葉は確かに世界中の辞書にその名を連ねることとなった。しかし、今の日本企業にはその面影すら残されていない気がする。改善という名の業務効率化、すなわち人員リストラを進め過ぎたために組織が疲弊し弱体化した、というのは悲観的すぎる見方だろうか。

 誤解していただきたくないのだが、本稿で申し上げたいことは、過去の成功体験を郷愁に浸って振り返ることではなく、その歴史的教訓の中に今後の行動に役立つヒントを見出すことにある。

日本の“KAIZEN”は過去のものに

 昨年ご紹介した「アジア リーンシックスシグマ(LSS)&プロセスエクセレンス サミット」(アジアLSSサミット)に参加してみても、相変わらず日本人に大きな期待を持たれているものの、それに応えられないでいるもどかしさ、のようなものを感じる。

 一方でグローバル化にもがく日本企業の経営者が、開き直りとも言えるドメスティックな引きこもりを決め込むことで、改善のグローバル化すら認識できていない実態がある。このギャップを解消できない限り、再び日本人が提案する手法が世界を席巻することは難しいだろう。

 筆者はアジアLSSサミットの場で、この数十年間の改善活動における日本の立ち位置の変化を童話「ウサギとカメ」になぞらえて講演した。当初は大きく先行していた“ウサギ”日本が、後から地道に改善を学んできた“カメ”新興国に追い抜かれる、というストーリーだ。


図1:ウサギとカメのたとえ 拡大画像表示

 多くのグローバル企業からの参加者を前に、甚だ自虐的過ぎるかと思いつつも、会場には異論もなく受け入れられていたことを見るにつけ、日本の改善が過去のものとなってしまったという事実を認識せざるを得なかった。

 非常に残念に思うのだが、これが日本の改善活動に対するグローバルの共通認識になりつつあるのが現状なのだ。