米国のオバマ政権は日本の尖閣諸島を本当に防衛するのか。
この疑問がますます深まってしまう。
その疑問はオバマ政権の日米同盟に対する基本的な態度への懐疑にもつながっている。
中国は8月に入って、尖閣海域の日本の領海への侵犯をますます強めてきた。このままだと尖閣諸島の日本の主権はおろか施政権までが崩れかねない。外国の艦艇が無断でいつでも侵入してくる海域の施政権を主張することは、このままでは至難となりそうなのだ。
だが日本の年来の同盟国、米国のオバマ政権は、尖閣の有事に日本を防衛するという方針を決して言明しない。日米安保条約の適用対象になるという婉曲な表現に留まるのみである。
日本の国家安全保障には日米同盟堅持がベストの方策
オバマ政権のすっきりしない態度の背景には、国際的リーダーシップの発揮や同盟諸国との価値観の共有、そして安定や抑止の基礎となる軍事力そのものを忌避するというオバマ大統領の傾向が明らかに影を広げている。
アラブ世界での米国の後退や対テロ闘争での弱腰を見ると、年来の2国間同盟を堅持するという米国の基本姿勢にさえも懐疑を覚えさせられるのである。
私はオバマ政権に対するこの種の懐疑や疑問をまとめて、『いつまでもアメリカが守ってくれると思うなよ』(幻冬舎新書)という本を上梓した。本のタイトルこそ、ややセンセーショナルではあるが、オバマ政権の対日防衛誓約の履行に様々な不信を覚えさせられる理由を多角的に説明した。
私がジャーナリストとして、あるいは、ときには研究者として、日米両国間の安全保障関係を考察するようになって、もう30年以上となる。その間、私自身は、日本の安全保障にとって日米同盟の堅持こそが最も現実的で賢明な選択肢だと判断してきた。
周知のように、日本との同盟関係を保ち、日本が第三国からの軍事力での攻撃や威嚇を受けた場合、米国が日本への実際の軍事支援を明確にするという米国の政策は、長年、超党派のコンセンサスに支えられてきた。東西冷戦中に日本へのソ連の軍事脅威が現実だった時代も、米国は核抑止も含めて、日本の防衛を誓い、いざという際にはその責務を実行する意思と能力をも明示してきた。