7月22日、中国国家海洋局に「国家海警局」が正式に発足した。2013年3月の全人代(国会に相当)で設立が決定されていたもので、公安部の指揮下に置かれる準軍事組織である。
国家海警局は海上警察権を行使する意味で、わが国の海上保安庁に相当する。しかも実働部隊は1万6296人、保有船舶は3000隻を超え、実力はともかくとして海保の規模をはるかに凌駕する。
海保の巡視船が「領海侵犯」で拿捕される可能性も
まず、おさらいをしておこう。中国の海上法執行機関は、主要なものとして以下の5つがあり、「五龍」として知られていた。
・海上警察である「海警」(公安部辺防海警部隊)
・海洋調査・監視の「海監」(国家海洋局海監総隊)
・漁業監視の「漁政」(農業部漁業局)
・「海関」(海関〈税関〉総署海上密輸取締警察)
・海上航行の安全を担当する「海巡」(交通運輸部)
このうち「海巡」を除く4つが「中国海警」の管轄下に一本化されたわけだ。
これまで中国の「海警」は中国各地の港湾に分散配置され警備を担当しており、尖閣海域のような遠く離れた海域にまで活動が及ぶ存在ではなかった。保有する艦船も1600トン級が最大で、主力は小型船舶であった。
尖閣海域で日本の海保とせめぎ合うのは、もっぱら「海監」と「漁政」である。大型艦艇を運用してきた実績からその任務が与えられてきたと言える。これらは確かに中国の公船であるとはいえ、「海監」は非武装(機銃など固定武装なし)である。「漁政」は武装船舶が多いが、尖閣海域で領海侵犯を試みるのが非武装の「海監」「漁政」船であるとされる。その理由として、武装した日本の海保に「先に手を出させたい」からと見られている。ともに、海上における警察権の行使を主任務にしてきた機関ではない。
今後は、こうした「海監」「漁政」を中核とした艦船が「中国海警」の名で海上警察権の行使を前面に出して尖閣海域に出てくることになる。非武装の「海監」も当然武装してくるだろう。
海保との対峙も、これまでと変わった対応をしてくる可能性もある。
特に注意しておきたいのは、日本の海保には、領海侵犯した船が外国公船である場合、警察権の行使ができないという法律の縛りがあるのに対し、「中国海警」にも同様の法的縛りがあるのかどうかだ。それがもしなければ、海保の巡視船が「中国海警」によって「領海侵犯」を理由に拿捕されることも考えられる。