平成19年版国民生活白書(内閣府)の表題は「つながりが築く豊かな国民生活」となっている。やや古い資料であるが、今回のテーマを考えるうえで興味深いのであえて紹介したい。
民間賃貸住宅の居住者は災害時に孤立する?
2007年「国民生活選好度調査」(内閣府)を基に、どういった属性の人が、近隣と行き来する確率が低いのか、隣近所で助け合う人がいる確率が高いのか、地域活動に参加しない確率が高いのか、地域から孤立する確率が高いのかを統計的に分析している。
「どういった人」の属性には、住んでいる住宅の形態も含まれており、その結果次の傾向が統計的に有意であるという。
つまり、一戸建ての持ち家居住者に比べ、民間賃貸マンション・アパートの居住者のほうが、近隣と行き来することが少なく、近隣関係で助け合う人が少なく、地域活動に参加することが少なく、地域内で孤立する可能性が高いということである。
持ち家に比べて、民間賃貸住宅居住者の方が、近隣や地域とのつながりが弱いことは、筆者自身の経験からも、一般的にみても「そうだろうな」と思うところであるが、特に、地域から孤立する確率が15.8%高いという結果は、孤立するリスクを具体的に示されているように感じ、少しハッとさせられるものがある。
民間賃貸住宅に住む人につながり意識の低い人が多いのか、民間賃貸住宅が近隣や地域とつながりにくい住居形態なのか、その両方なのかこの結果だけでは判断できないが、持ち家の場合に比べ一般的に居住期間が短いこと、分譲マンションの管理組合や公的賃貸住宅における自治会などの入居者組織がないこと、そうしたことも関係して入居者同士が交流する機会や地域住民と触れ合うきっかけを得にくいことが要因として考えられる。
見方を変えると、それゆえあえて、他人との交流を求めない意識が強い人にとっては、都合のよい住居形態だと言えよう。
しかし、災害時の孤立は生死にそのまま直結するのである。日頃から隣近所との共助の関係を築いておくことが、災害時の助け合いや支え合いにつながることを考えれば、居住者同士の交流、居住者と地域との交流の場や機会を積極的につくっていくことが、民間賃貸住宅においてより重要であると言える。