マット安川 米ブッシュ政権や英ブレアー政権、英王室から紛争地帯まで取材されてきた、毎日新聞編集委員・笠原敏彦さんが初登場。いちジャーナリストとしての見識や体験、外から見た日本などをお聞きしました。
欧米人の日本観はこの10年でガラリと変わった
毎日新聞編集編成局編集委員。1985年毎日新聞社に入社。97年10月~2002年9月ロンドン特派員、2005年4月~08年3月ワシントン特派員、2009年4月~12年3月欧州総局長(ロンドン)を務めるなど海外経験豊富。英国、米国の政治・外交やアフガン戦争、コソボ紛争、イラク戦争などを取材。(撮影:前田せいめい、以下同)
笠原 ロンドンに5年、ワシントンに3年、さらにロンドンに3年駐在して、去年の4月に帰ってきました。海外から戻ってくると日本の変化がよく分かります。
例えば、週末に自宅近くの公園で見る風景が変わりました。2008年にワシントンから帰ってきたときに気づいたのは、日がな一日、小さい子供を遊ばせている若い夫婦が増えたことです。
それまで日本のお父さんといえば、平日は仕事帰りに居酒屋で憂さを晴らして、休日は家族を連れてドライブにでも行くイメージでしたから、ちょっと意外でした。
驚いたのは、去年の春に帰ってきたときです。公園にテントを張る人まで現れて、やっぱり子供を遊ばせながらテントの中で本を読んだりしている。休日を家族と近場の公園で過ごすというのは、ロンドンやワシントンでもよく見る光景です。
僕はこれを非常にいい変化だと思います。経済なんてどうなるか分からないんですから、お金ではないコアバリューを持つべきですし、それが家族との関係であればけっこうなことです。
結婚しないカップルでも同性同士でもいいんですけど、そういうしっかりした人間関係に生活の重心が置かれると、社会全体が非常に打たれ強くなると思います。
変わったといえば、欧米の人たちの日本観もこの10年で大きく変化しています。
イギリス人に関して言えば、第2次世界大戦の記憶があるせいか日本をよく思っていませんでした。僕が最初にロンドンに行ったころは、新幹線が常に定刻で走るとか、ラッシュアワーの混雑がものすごいとか、かなりステレオタイプな日本観が一般的だったと思います。
しかし、帰国するころにはガラリと好転していました。アニメやマンガ、ポップカルチャーのイメージが強くなった。ビジネスマンのお昼時、テイクアウトの一番人気は日本食でしたしね。
ひとつ印象的だったのは、サッカーのワールドカップで日本が活躍したとき、本田(圭佑)選手が髪を金色に染めていることにみんなが敏感に反応していたこと。日本人の印象は、そんなことで大きく変わるんです。
半年前と異なるマニフェスト。ねじれ状態維持の方がまだ安心?
本当に選挙中なのかと思ってしまうくらい、今度の参議院選挙は盛り上がりに欠けます。
ひとつの理由は参議院の役割が分かりにくいことでしょう。昔なら衆議院のカーボンコピー、今はねじれの元凶。どっちにしても参議院なんて要らないんじゃないかという声が、そのうちまた出てきます。