「今朝出された移民法改正案の条文を読んだけど、かなり不十分な点が多いね。対策を考えないと」

 キャサリンはクイーンズに住む17歳の高校生。私がニューヨーク市のコミュニティーグループ、Make the Road New York(MRNY)のクイーンズオフィスに行くと必ず彼女はいて、ボランティアとして様々な仕事をしています。

 とても明るくて活発、そして高校生たちのリーダーとして輝いているキャサリンですが、実は彼女とその家族は合法的な滞在許可を持っていません。

市民権がない移民の大学進学は、高額の学費がかかる留学扱い

 キャサリンの父親は、かつてコロンビアのある国際的企業で働いていました。しかし会社の都合で急に解雇され、その後5年間全く仕事がない状況が続きました。経済的に困り果てた家族は相談し、3年前に全員でアメリカに行こうと決めたのです。

 しかし、父親は結局コロンビアに帰ってしまい、今は母親が週7日働いて家計を支えています。

 彼女が主に取り組んでいるのは、冒頭で述べている移民法の改正に加え、「Dream Act」をニューヨーク州や連邦政府で成立させること。「Dream Act」とは、幼くしてアメリカにやって来た移民の子供たちの大学進学を可能にし、市民権を獲得する道を提供するための法律です。

連邦議事堂前に集まった数万人を前にスピーチするキャサリン・タバレス・ゲレロ(Katherine Tabares Guerrero)。隣は彼女の母親(写真提供:筆者、以下同)

 幼い頃に親に連れられて移民してきた子供たちは、市民権がなくても高校までは市民と同様に教育を受けられます。しかし、大学に入学する時点で市民権のない子供たちは留学生扱いになり、高額の学費を課されます。

 またアメリカは大学生のための奨学金が豊富に用意されているのですが、留学生向けだと数がぐっと減ってしまいます。そのため、多くの移民の子供たちは市民権がないという理由で大学進学を諦めているのです。

 高校生まで他のアメリカ人の子供と同じように育てられてきて、大学進学で「アメリカ市民ではない」と急に突きつけられる現実には大変厳しいものがあります。また、いつ本国に強制送還されるか分からないため、自分のことをあまり話したがらない若者も多いのです。