「日本の高校の教育ってどんな感じなの?」「日本の大学の教育の質はいいの?」

 21歳のエリックは教育問題に高い関心があり、ニューヨーク市の教育問題を熟知し、教育に関する複数のNPOで積極的に活動しています。私にも、彼は熱心に日本の教育状況について質問してきました。

 といっても彼の見かけはニット帽にダボッとしたジャケットとジーンズといった今時のストリートファッションに身を包んだ男の子です。

 前回の記事で、私が関わっているニューヨーク市のコミュニティーグループ、Make the Road New York(MRNY)の高校生の活動「ユースパワープロジェクト」について書きましたが、今回と次回はその具体的な活動の内容を、メンバーを紹介しながらお伝えしたいと思います。

共通学力テストの結果で閉鎖や予算削減になるニューヨーク市の公立高校

エリック・ペレス(Erick Perez)はドミニカ出身の21歳(写真提供:筆者、以下同)

 エリックが立ち向かっている大きな課題、それはニューヨーク市の公立高校教育です。

 ニューヨーク市では現在のブルームバーグ市長が2002年に就任して以来、140校の高校が閉鎖されてしまいました。また教育関連の予算も毎年のように削減されています。

 学校閉鎖と学校ごとの予算決定の大きな鍵となるのが、共通の学力テストの結果です。毎年行われる学力テストの成績が悪いと、学校は閉鎖対象になったり、予算を削減されたりされます。

 また学力テストの導入にもかかわらず、最近のアメリカでは大学入学時に全体の4分の1程度の生徒しか、大学での学習に必要な基礎学力を身につけていないと言われています。

 これは特に教育の質が低い貧しい地域に住む生徒たちの問題と考えられていました。しかし、いわゆるトップ大学に入学する生徒たちも、全体的に数学の公式が何を意味するか分かっていない、自分で問題を特定して調べる能力が備わっていないといった問題が見られるようで、教授方法に根本的な問題があると考えられています。

 また芸術や体育といった学力テストに関係ないような授業は削られつつあります。

 「自分の行った高校は恵まれていたから在学中はこういった問題に気づかなかったけど、去年大学を休学してNPO活動を始めてから、他の高校の状況を知って本当に驚いたよ。

 予算の無い学校は、古くて壊れた施設を使い続けていたり、図書館に本が全然なかったりするのも知らなかった。そして実際に起こっている大きな問題なのに多くの人々が、知らないんだよね」