ヒット商品やロングセラー商品の開発担当者に「ぜひともここを見て!」というこだわりのポイントを披露してもらうココミテ選手権。今回登場するのは、TOTOで家庭用温水洗浄便座ウォシュレットの開発に携わっている濱北明希(はまきた・あき)氏だ。
ウォシュレットが「おしりだって洗ってほしい」のキャッチフレーズで一気に知名度を高めたのは、1982年(発売は80年)。それからおよそ30年後、2011年2月に発売された新型モデルには、除菌効果のある「きれい除菌水」によってノズルを洗浄する機能を搭載。翌年2月には、「きれい除菌水」のミストを便器ボウル面に吹きかけることによって、トイレが自動できれいになる業界初の新機能が搭載された。
「きれい除菌水」とは、水道水に含まれる塩化物イオンを電気分解して作られる、除菌成分(次亜塩素酸)を含む水。薬品を使わず、使用後は水に戻るため、環境にもやさしい安全・安心な水である。
トイレ使用前後にノズルの内側・外側を自動的に洗浄するほか、トイレ使用後と8時間使用しない時には便器ボウル面に自動でミストを吹きかけ、“見えない汚れ”も取り除くことができる。
新技術によって進化を続けているウォシュレット。日本の温水洗浄便座は、ハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオ、マドンナらが愛用していることでも有名だが、実は海外での知名度はまだ低い。2006年にTOTOに入社した濱北氏は、入社説明会で「これからは海外に市場展開し、新しい生活習慣を多くの人々に提案していきたい」という人事担当者の言葉に触発され、入社を決意したという。「トイレを家の中でいちばん“きれい”な場所にしたい」という情熱のココミテ話に耳を傾けてみよう。
トイレの汚れには、目に見えるものと
見えないものがあります
──濱北さんは、小さいころからウォシュレットを使っていましたか?
濱北明希氏(以下、敬称略) いえ、私の家にはありませんでした。なにしろ温水洗浄便座市場全体で、ウォシュレットの家庭での普及率が7割を超えたのは2011年のことですから。本格的に使い始めたのは就職して、ひとり暮らしをするようになってからです。ウォシュレットの開発担当者になったわけですから、使わないわけにはいきません(笑)。