4月3日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2012年の武器輸出額が152億ドルと過去最高(対前年比12%増)となったことを明らかにした。これは米国に次ぐ世界第2位の数字であり、世界の武器市場の実に4分の1を占める。

世界市場の25%を占めるまで急拡大したロシアの武器輸出

ベラルーシ空軍戦闘機が墜落、航空ショー中にバードストライクで

ロシア製「Su-27」戦闘機(写真はベラルーシ空軍のもの)〔AFPBB News

 冷戦期のソ連は戦略援助として同盟国・友好国に大量の武器輸出を行ってきたが、ソ連崩壊後、武器輸出行政の混乱によって輸出高は大幅に下落していた。

 しかし、プーチン政権が武器輸出窓口を国営武器輸出公社に一本化するなどして国家的に武器輸出拡大に向けた態勢を整えたことで再び武器輸出は増加傾向に転じた。2004年以降は毎年60億ドル以上、さらに2010年以降は毎年100億ドル以上を記録し続けてきた。

 その後も武器輸出額は拡大の一途を辿り、ついに150億ドルの大台に乗ったわけである。

 プーチン政権が武器輸出を重視するのは、それが原油・天然ガスに依存した経済からの脱却を目指す国家戦略と密接に関係しているためだ。

 現在、ロシアの国庫収入は約半分を原油・天然ガス収入に頼っているが、国際価格に左右されるため、安定的な収入源とは言いがたい。

 今後も経済の主力がエネルギー資源であることは変わらないにせよ、その依存度を低下させるためには資源以外にも国際市場で勝負できる製造業を持たなければならない。

 そこでロシア政府は、もともとロシアが得意とする航空・宇宙・造船・原子力に、今後の重要技術となるIT・ナノテクを加えた6分野を重点育成分野として資源依存経済からの脱却を図ってきた。軍需産業はこうした重点分野の多くに関わるうえ、すでに高い国際競争力を持っている。

 したがって、武器・軍用装備の売り込みを通じて外貨を稼ぎ、それを元手にさらに幅広い産業の活性化を図るというのがプーチン政権の戦略なのである。

 だが、ロシアの武器輸出を取り巻く状況は決して安泰なものではない。

 これまでロシア製兵器の大口顧客と言えば中国とインドだったが、前者は2000年代後半以降、国産兵器の比率を高めつつあり、ロシアとの間では目立った取引がほとんど行われていない。