ニッケイ新聞 2013年3月23日

 リオ市マラカナンの旧インディオ博物館取り壊しを巡り、21日朝、先住民や支援者と軍警隊が衝突、11時45分には突撃隊が博物館跡地に乗り込んだと同日付各紙サイトが報じた。州政府が先住民文化センター建設への保証を明示しない事が先住民達の根強い抵抗を生んでいた。

 マラカナン地区にあるカザロン(大きな家)を利用した旧インディオ博物館は、閉鎖後も文化継承を望む先住民の居住地となっていたが、取り壊しに反対して立てこもっていた先住民達を立ち退かせるための突撃隊導入は、21日午前11時45分に決行された。

 1910年開設のインディオ博物館は1978年にボタフォゴに移転したが、1600平米の跡地には2006年に文化継承などを願う先住民が住み着き、マラカナン居住区を形成。同居住区はコンフェデレーションズ杯やW杯、リオ五輪の会場ともなるマラカナン・スタジアムと隣接し、スタジアム前で手作りの民芸品を売る先住民の姿も頻繁に見られていた。

 ところが、2012年10月に、州政府が同居住区をオリンピック博物館にする事を決定。それ以来、先住民や支援者がカザロンの取り壊しに対する様々な反対運動を繰り返してきたが、19日に裁判所の立ち退き命令が期限を迎えたため、州政府が20日、カザロンに立てこもっていた先住民に最後通告を出した。

 これを聞いた先住民の支援グループは、21日未明にカザロン周辺に集結し周囲の道路の封鎖などを決行、警官はゴム弾や催涙ガス弾で対応。カザロン周辺は警官が包囲し、先住民側の弁護士が中に入る事も困難な状態だったが、10時半頃、交渉に応じた先住民10人が域外に出た。

 後に残った先住民は約50人で、11時頃には警官隊の包囲網が緩み、合意成立と見られたが、11時半頃、先住民古来の茅葺住居に火がかけられたため、消防の派遣と警官隊突入となった。

 警官隊突入後もカザロン周辺では、投石などで抵抗する居住区支援者に対し、警官隊がゴム弾や催涙ガス弾、唐辛子スプレーなどを使用。朝からの混乱で連行された人は7人と報じられた。

 現場に駆けつけたマルセロ・リベイロ・フレイショ州議員やダニエル・マセド国家公選弁護人によると、軍警には、空砲を撃ち、両人や検事らにも唐辛子スプレーを浴びせるなどの行き過ぎた行動が見られ、最後のダンスをするために10分間待ってくれという先住民の願いも聞き入れてもらえなかったようだ。

 州政府は先住民文化センター建設とセンター完成までの住居提供を約束していたが、センター建設を明確な形で保証しなかった事が先住民達の根強い抵抗を生んだ。21日は、2014年末までにキンタ・ダ・ボア・ヴィスタ公園かジャカレパグアにセンター建設を約束する文書が取り交わされたという。

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