中国で感染が相次ぐ鳥インフルエンザウイルス「H7N9型」だが、4月4日までに4つの省と市で感染、9人中3人が死亡したことが確認された。

 上海ではH7N9の鳥インフルエンザについて、「黄色」信号が点灯した。中国では警告段階を4つのフェーズに分けて規定している。中国衛生部(日本の厚労省に相当)の「衛生部インフルエンザ大流行準備計画と緊急対策案」によれば、黄色は「フェーズ2」に相当する。

【衛生部インフルエンザ大流行準備計画と緊急対策案】

・フェーズ4(赤色)=「特別重大」 世界規模で感染が広がる状態。パンデミック
・フェーズ3(橙色)=「重大」 人から人への感染が認められるが感染範囲は限定的
・フェーズ2(黄色)=「較大」 人から人への感染はまだ発生していない
・フェーズ1(青色)=「一般」 人の体内に新亜型ウイルスが検出されるが、特異性抗体を持たない状況

最初に死亡者が出てから国民が知るまで4週間

 中国では4月5日までに、4つの省と市で感染、14人中5人の死亡者が確認された。発病・死亡した場所、年齢、職業、発病した日は次の通りだ。

・上海市    87歳(男) 定年退職者   2月19日発病、3月4日死亡
・上海市    27歳(男) 豚肉の販売業者 2月27日発病、3月10日死亡
・浙江省杭州市 38歳(男) 調理師     3月7日発病、3月27日死亡
・安徽省●州  35歳(女) 無職      3月9日発病
(●の字はさんずいに「除」)
・江蘇省宿遷市 48歳(女) 板材料の加工  3月19日発病
・江蘇省南京市 45歳(女) 家禽類の屠畜  3月19日発病
・江蘇省無錫市 32歳(女) 無職      3月21日発病
・江蘇省蘇州市 83歳(男) 定年退職者   3月20日発病 
・浙江省杭州市 67歳(男) 定年退職者   3月25日発病
・上海市    48歳(男) 家禽運搬業   3月28日発病、4月3日死亡
・上海市    52歳(女) 定年退職者   3月27日発病、4月3日死亡
・上海市    67歳(女) 定年退職者   3月22日発病
・上海市    4歳(男)  幼稚園児     3月31日発病

 (2013年4月4~5日「東方早報」に基づいて筆者作成)

 ここで問題となるのが情報公開のスピードだ。最初の死亡者が出たのは3月4日、そこから国民全体がこの情報を知るまでに4週間近い時間が流れている。

 上海市公共衛生臨床センターが、死亡した患者がH7型のウイルス感染の可能性を指摘したのは3月22日のこと、その後、このサンプルを上海市疾病コントロールセンターに送った。同センターは3月29日になって検体からH7N9型ウイルスを確認する。そして3月31日になって情報を公開した。そして4月1日、ようやく新聞が1面で「上海、安徽省でH7N9型鳥インフルエンザに3人が感染、2人が死亡」と伝えた。これに対し、中国では今「情報公開が遅れたのはなぜか?」という批判が上がっている。

 情報公開が遅れた理由について、上海市疾病コントロールセンターの呉凡主任は上海の地元紙「東方早報」に対し、次のようにコメントしている。「H7N9は新型であることから、まずSARSなど既存のウイルスの可能性を排除し、そこから未知のウイルスとしての判断を行う必要があった。遺伝子との比較照合を経て、国家疾病コントロールセンターにデータを送り、そこでの確認を経てH7N9の特定に至った。そのために時間がかかった」