私は作家になってから今年で13年目になるが、その間一度も成人病予防健診を受けていない。医療に関してこれといった定見があるわけではなく、とりあえず健康が維持されているのをいいことに、そのままにしてきただけである。

 2月で私も48歳になり、足腰や歯には歳相応のガタがきている。ただ、自覚症状のある痛みや心身の不調はない。タバコは吸わず、お酒は嗜む程度。快食快便。毎晩よく眠れて、寝覚めは爽快。よって、常用している薬もなく、できればこのまま医師や薬と縁遠いまま老いていければと思っている。

 といった次第で、新年度に相応しい話題とは言いがたいけれど、今回は「私と医療」について日ごろから思っていることを述べてみたい。

                ★     ★     ★     ★

 25歳から35歳まで勤めていた会社では、毎年1回検診車が来て、尿検査や肺のレントゲン撮影をはじめとする健康診断を受けさせられた。

 大宮食肉荷受株式会社・作業部作業課が私の所属であり、平たく言うと牛や豚の屠畜・解体をしていた。ナイフを握り、牛や豚の足を取ったり、皮を剥いたりする。熟練のいる重労働で、夏場はもちろん、真冬の時期でも作業着が汗でびしょ濡れになる。体の外に流れ出た水分を補うためにスポーツ飲料を大量に摂取しながら、私はひたすら働き続けた。

 健康診断を受けるのは、そうした過酷な労働が終わって間もない時なので、これで各種検査の正常な値が取れているのかどうか、私は疑問だった。後日送られてきた検査結果を見ると、たいてい血糖値が異様に高く、「要再検査」とされているのだが、休みの土曜日に近所の医院で測ってもらうと「異常なし」となった。

 私は身長170センチ、体重80キロ前後で、この15年ほど大きな変化はない。数字だけを見れば肥満傾向にあるが、それは激しい肉体労働によって筋肉がついたからで、胸囲は1メートルを超えている。おそらく、私の体型を見て太っていると思う人はいないだろう。それなのに、会社で健康診断を受けると、肥満だから痩せるようにと指摘される。つまり、人の実態を見ずに、数値だけで健康か不健康かを判断しようとしているわけだ。そのため、そんな健康診断なら受けても受けなくても同じだと、私は考えるようになった。