2012年12月の衆議院選挙に対して、広島高裁、広島高裁岡山支部が立て続けに「違憲、無効」の判決を下した。仮に無効判決が確定すれば、当選者は失職するという厳しい判決であった。

裁判所が選挙そのものを無効と判断した理由

 この判決の論理は次のように組み立てられている。

(1)国民一人ひとりが平等の権利で代表者を選出するからこそ、国民多数の意見と国会の多数意見が一致し、国民主権を実質的に保障することになる。投票価値の平等は、国民主権・代表民主制の原理及び法の下の平等原則から、憲法の要求するところである。

(2)国民主権・代表民主制の原理の趣旨から、投票価値の平等は最も重要な基準であり、これに反する選挙に関する定めは、合理的な理由がない限り、憲法に違反し無効である。

(3)2009年選挙の無効請求訴訟において、2011年の最高裁大法廷判決は、1人別枠方式(小選挙区300議席のうち、47都道府県にまず1議席を「別枠」として割り当て、残り253議席を人口に比例して配分する方式)は、2009年選挙時において合理性が失われているうえに、選挙区割りも投票価値の平等に反する状態に至っていると判断している。ところが2012年の選挙では、格差2倍以上の選挙区が2009年選挙より45選挙区も増加しており、投票価値の平等に著しく反する状態に至っていたことは明らかである。

 このことから国会は、現行区割り規定が違憲状態であることを認識できた。ところが国会は、最高裁判決から2012年末選挙まで1年9カ月もあったにもかかわらず、区割り規定や選挙制度の改定をなさなかったのは、司法の判断に対する甚だしい軽視である。したがって現行区割り規定は、違憲である。

(4)無効判決が確定した選挙区のみ当選を失効させたとしても、長期にわたって投票価値の平等に反する状態を容認することの弊害に比べれば、政治的混乱は大きくない。