2011年3月、格付け機関フィッチは、「2013年までに中国が実施した一連の景気刺激策と金融緩和策は、60%の確率で金融危機をもたらす可能性がある」と警鐘を鳴らした。

 それに対して、米ピーターソン国際経済研究所の中国経済専門家のN・R・ラーディー氏は新しい著書“Sustaining China’s Economic Growth after the Global Financial Crisis”の中で、「中国の公債はすでに明らかになった分だけでGDP比で2割程度であり、この程度の公債で中国が大規模な金融危機に陥ることは考えにくい」と指摘している。

 それよりも中国の財政の大きな問題は、明らかになっていない地方政府の隠れ債務である。

 現在のルールでは、地方政府(自治体)は商業銀行からの借り入れが認められていない。だが、地方政府は地下鉄や道路などインフラ整備のための資金需要が旺盛であり、商業銀行の中長期的な融資の多くは地方政府に帰属する投資会社に向かった。

 商業銀行が直接地方政府に融資するのは違法だが、地方政府帰属の国有投資会社への貸し出しは違法行為ではない。例えば、ある地方政府は商業銀行から直接、資金を借り入れることはできないが、地下鉄建設会社を設立して、それを受け皿にして商業銀行から資金を借り入れるのは違法ではないということである。

目に見えない国有投資会社のキャッシュフロー

 2011年、国家審計署(会計検査院)は地方債務の調査結果を公表した。それによると、地方債務残高は12兆元程度と言われる。2011年の名目GDP比で計算すれば、2割いかない規模だった。

 だが、この調査の結果については「氷山の一角」との声が多かった。地方債務のすべてが表面化しているわけではなく、地方債務の問題は依然深刻なレベルにあると見られている。地方債務の規模を100%明らかにすることは難しい。特に違法な融資やグレーな資金の流れについては、いくら国家審計署といってもすべて明らかにすることは不可能だ。