「今の仕事を続けて、私は10年後、幸せに生きているだろうか」
連載の初回で私が人生をシフトさせた経緯を書きましたが、今回は「政治に関わる仕事」という面から少しお話しさせてください。
大学で就活をしていた時は、日本だけでなく世界のどこでも働けるプロフェッショナルになろうと考えていました。そこで外資系企業に就職し、10年間、英語やビジネススキルを学び、専門知識を身につけようと働きました。
働きだして10年経ち、「世界のどこでも働ける」は言い過ぎですが、自分が目指してきたものには近くなっていました。しかし、最初の問いに対する私の答えは明確に「幸せではない」でした。
なぜそうはっきりと思ったのか、自分でもすべて分かっているわけではありません。企業での仕事は自分が望んでいた環境関連の仕事でしたし、やりがいもありました。でも、どこか仕事を楽しめていない自分を感じていました。
「人生の長い時間を費やす仕事は自分が心から楽しめるものにしたい。世の中をより良くする、人々を幸せにする仕事は自分の一生をかけても挑戦したい楽しい仕事だ。お金のことはちょっと気になるけど、何とかなるだろう」――1年くらい考えたでしょうか。それが私の出した答えでした。
政治家にならなくても政治を変えることができる
アメリカには政治家やそのスタッフ、公務員にならなくとも政治に関わる仕事がたくさんあります。政策分析や提言を行うシンクタンク、NPOがその代表と言えます。
アメリカのシンクタンクの数は約1800(日本は約100)注1、NPOは約150万注2(日本は約4.7万注3)です。
(注1)参考:Think Tanks & Civil Societies Program
(注2)参考:National Center for Charitable Statistics
(注3)参考:内閣府NPOホームページ
NPOには慈善団体、財団など直接政治や社会に働きかけることを目的としない団体も含まれていますが、政治に市民の声を届け、政策を変えようと動いている団体は数多く、私が今働いている組織、CPD(Center for Popular Democracy)もその1つです。
CPDは2012年4月にできた、設立1年も経たない出来立てほやほやのNPOです。創立者の1人であるアンドリュー・フリードマンはニューヨーク大学のロースクール在学中にホームレス女性の支援に関わっていました。
その活動を通じて、生活難に直面している人たちの問題を解消するには、単純に食事の配給や就職支援をするサービスの提供だけではなく、政策を変えることで根本的な社会変化を起こすことが必要だと実感したそうです。