読者の方は、OA(Office Automation/オフィスオートメーション)という言葉を覚えているだろうか。日本では1980年代から1990年代前半にかけて流行し、実際にPCが1人1台支給されるようになった。
OA化によって変わったこと、変わらなかったこと
このオフィスオートメーションという言葉は、マサチューセッツ工科大学(MIT) スローンスクールのマイケル・D・ツィスマン(Michael D. Zisman)の論文、「Office Automation: Revolution or Evolution? (April, 1978)」で説明されている。
ところで、この論文のタイトルにあるような、OA化による「革命」または「進化」が日本の企業にはあったのだろうか。パーソナルコンピュータやネットワークが使えるようになったことで、業務の本質に影響をもたらすようなことは起こっただろうか。
電子メールが使えるようになり、社内の文書も多くが電子化され、さまざまな承認手続きが電子化された。しかし、業務プロセス(手続き)そのものが変わっただろうか。
この当時のOA推進プロジェクトは、情報システム部門による社内プロセスの標準化と文書化、そして既存プロセスの電子化というものがほとんどであった。電子化する際にはもっと業務改善に寄与する方法があったのかもしれないが、そこは先送りしていたのである。
OA化とイントラネットブームに共通する誤り
OA化のブームが冷め切らず、OA推進プロジェクトの振り返りをしないうちに、2000年前後には「イントラネットブーム」が企業に押し寄せてきた。
メールだけで業務連絡が行われ、また組織の専門性が高くなっていた当時、イントラネットは情報共有や管理の解決策のように見えた。
多くの企業でイントラネットのサイトが立ち上がり、社内の情報流通量が増えたことと思う。だが、そのころ有識者が話題にしていた「企業文化」の醸成、「ナレッジ」の共有にまで進化できたのかは疑わしい。
社内報がイントラ化(ペーパーレス化)され、社内電話帳や会議室の予約、備品の購入などが電子化されたと思うが、それは「ナレッジ」なのだろうか。
OA化とイントラネット構築という2つのブームには、同じ間違いがあるのではないかと私は考えている。
日本の企業の中で、この2つのブームを社内の業務改革と捉え、組織横断でプロジェクトを遂行できた会社はあったのか。そして、中期的な視点でプロジェクトのゴールを考えていたのだろうか・・・。