本年、日中国交回復40周年を迎えたが、4月の石原都知事の「尖閣諸島購入」発言から始まって友好ムードは霧散し、両国関係は悪化の一途をたどっている。
特に、9月、魚釣島、北・南小島の国有化決定以降、一挙に中国の態度は硬化し、反日デモ、その暴徒による日系企業、店舗の破壊・放火などが生起した。
「盗み取った」発言を許していいのか
また尖閣諸島には中国公船(漁業監視船、海洋調査船)による執拗な領海侵入、加えて台湾漁船の侵入など緊迫した状態が続いている。
さらに野田佳彦首相の出席した国連総会では、中国側から「日本は尖閣諸島を盗み取った」という非礼な発言が繰り返された。
このような中国に対し、日本政府は「大局感をもって意思の疎通を図り、冷静に理性的に品格ある対応をする」との態度に終始している。
これは一見して国際社会における成熟した国家の対応に見えるが、「そうせざるを得ない受動的な国家戦略を、あたかも主動的である」と真実を隠し、糊塗している。まさに国民を欺く詭弁である。
我が国は、戦争放棄の憲法に従って「国際紛争解決に武力を行使せず、威嚇を行わず、そのための軍隊を保有しない。ただし、憲法解釈上、自衛のため、必要最小限度の実力(戦力ではない)を保有する。集団的自衛権を有するが憲法上行使しない」としている。
憲法に基づく日本の国家戦略は、端的に表現するならば「国家の安全は世界の信義に委ね、富国軽兵、有徳の国家を目指す」であろう。
この戦略は、民族、宗教、文化、政治体制、経済規模など多種多様な190を超す国家が混在する国際社会では、理想主義的もっと厳しく言えば空想的な面がある。